農作物の栽培で生産者を悩ませているのが“害虫”だ。とくにハダニ類やアブラムシ類などは、多くの作物に被害をもたらす存在として知られている。
害虫対策の代表的な方法として化学薬品の散布があげられるが、環境汚染問題や人体への悪影響といった懸念点も。
そこで昨今、農業関連の産業では、化学薬品に頼るこれまでの手法に代わる“自然で持続可能な農業”に向けた動きが加速している。たとえば、害虫の天敵を放して、害虫を捕食してもらうといった方法だ。
こうした機運のなか、イスラエル発のアグリテック企業BioBeeは、生物学的害虫駆除のための環境に優しいソリューションを提供。過酷な化学薬品の使用を削減し、農家が化学残留物のない高品質の果物、野菜、花を栽培できるように支援している。
昆虫研究からアグリテック企業へ

BioBee 公式サイトより引用
イスラエルの有機農業の創始者である故Mario Levy氏の「農業の問題の解決策は自然のなかにある」との考えにもとづき、独学で昆虫学を学んだYaakov Nakash氏が防空壕で昆虫を研究をはじめ、Akiva Falk氏とともに会社の設立に乗り出した。
わずか5人の従業員でスタートした同社は、現在では300人以上の従業員を抱えるまでに成長。
BioBeeは現在、生物学的根拠にもとづく総合的害虫管理、自然受粉、メバエ駆除の分野で世界有数の国際企業として知られる。
農薬不使用。「益虫」による害虫駆除

BioBee 公式サイトより引用
生物学的害虫駆除は、自然で化学薬品を使用せずに、害虫を捕食する「益虫」を活用したソリューション。捕食性ダニ、寄生蜂、捕食性昆虫などの幅広い益虫を生産者へ提供し、害虫の繁殖を防ぐという。
同ソリューションによって、生産者は化学残留物のない高品質な果物、野菜、花を多く収量できるほか、利益をアップさせることが可能だ。
駆除の対象となる害虫はアブラムシやダニ、ゾウムシなどさまざま。
なかでもヨーロッパ、中東、アフリカに生息する「地中海ミバエ」は、何百もの熱帯の果物や野菜に寄生し、深刻な劣化と経済的損失を引き起こす存在として、多くの農家を悩ませている。
そこでBioBeeは、滅菌昆虫技術(SIT)を使用して不妊雄の繁殖を実施。不妊の雄と生殖能力のある雌の間で交配しても生存可能な子孫は生まれないため、徐々に地中海ミバエの個体数を抑制できるという。