もしも家持ちで1億円の預貯金があったら皆さんどうしますか?FIREしますか?私ならそれを種銭にしてなにか大きく踏み出します。

人生80年なり100年なりをもう一度見返すと今の時代、特に日本で生きる方は少なくとも人類の歴史で最も自由度が大きく、最大の可能性が与えられています。お金さえ出せば宇宙にも行ける時代です。それだけチャンスがあるのに早期リタイアあるいは定年してちっちゃくまとまるライフは私にはまるで考えられないのです。

カナダ バンクーバー Oliver Crook/iStock

私の周りには日本の会社を早期退職してバイトをしている方も多いのですが、時給1500円、雇用は1年ごとに見直しという枠組みにやむを得ず承知しなくてはいけません。その後、65歳、70歳と歳を重ね、いよいよ精神的肉体的に衰えが出てくるとゆっくりとした隠居生活になっていきます。それでも自由になるお金が十分にあって常日頃、刺激があるライフを過ごせれば素晴らしいですが、飲み屋で寂しく一人酒ではあまりにも華がなさすぎます。

私はカナダで31年生活をしていて思うことがあるのです。仕事の付き合いの人とそれ以外の付き合いの人が二本立てで存在し、仕事の付き合いの人は仕事以上に踏み込むことはないことです。つまり、私が31年間、様々な外部とのお付き合いをし続け、新たな出会いに感謝し続けて、それをパイ生地のように層状に積み上げていったからこそもっと面白い方に出会えるようになってきたのです。

人は私のことを見ています。そして信頼できるのか、ぶれないのか、信念はあるのかなど、目先の仕事の業績だけでなく人物を見ているのです。2004年に会社を買収した際、買収資金の調達に苦戦していました。すると今までお付き合いのなかったあるカナダの大手銀行が「全額、お貸ししましょうか?」と囁いたのです。これは悪魔のささやき、騙されているのか、はたまた消費者金融ではないか、とかいろいろ勘繰ったのですが、まともなオファーでした。

その銀行から全額調達した際に銀行の社長がトロントからわざわざ私に会うために飛んできて、一緒にランチをしたのです。その時言われたのが「かつてお付き合いしたことのない会社に多額の資金提供をするにあたり、あなたのやってきた仕事が素晴らしかったと現地担当者から聞かされた。だから自分でもそれを確認しようと思い、こうやってきたのです」と言われたのです。

つまり立派なプレゼンでもない、いかにも儲かる数字が羅列された資料を渡すわけでもないのです。人を見てくれたのです。