ありし日の姿を立体的に復元!

復元の結果、樹木の高さは約2.7メートルで幹の直径は約16センチと小さなサイズでしたが、樹冠にあたる約75センチの幹の間に250枚以上もの葉っぱが密集して生えていたのです。

枝は存在図、細い幹から葉っぱが直接生え出していました。

葉っぱの長さは部分的に保存された化石断片だけでも1.75メートルあり、本来なら3メートル近く伸びていたのではないかとチームは推測しています。

全体の復元図(番号1〜3は葉っぱの断面図)
全体の復元図(番号1〜3は葉っぱの断面図) / Credit: Robert A. Gastaldo et al., Current Biology(2024)

各々の葉っぱは螺旋状に配列されており、近くの葉っぱとできるだけ重なり合わないようになっていました。

ガスタルド氏はこれについて「光合成で取り込める日光の量を最大化するためのレイアウトだろう」と述べています。

また背が低いことから、サンフォルディアカウリスは近くに生えている背の高い樹木の真下に自生していたことを示唆します。

こうした日光を受けにくい悪条件を踏まえた上でも、葉っぱを螺旋状にディスプレイする必要があったのかもしれません。

サンフォルディアカウリスは一見すると、熱帯地方に見られるシダやヤシの木に似ていますが、葉の数で明確に違っていました。

シダやヤシの木はだいたい15〜20枚程度の葉っぱしかつけないので、サンフォルディアカウリスの異常さが伺えます。

現代のヤシの木
現代のヤシの木 / Credit: canva

植物の進化実験の失敗例?

これまでの研究で、植物は約4億7000万年前に陸上に進出し、約4億1900万〜3億5900万年前のデボン紀に種や形状の多様化が始まったことが分かっています。

サンフォルディアカウリスはおそらく、約3億5900万〜2億9900万年前の石炭紀に実験的に出現した種であり、生存競争に適応できなかったせいで淘汰された可能性が高いとのことです。

やはり背が低い上に限度を越した葉っぱの多さが、種の繁栄にブレーキをかけたのでしょう。

サンフォルディアカウリスと同時代に存在した他の樹木の高さ
サンフォルディアカウリスと同時代に存在した他の樹木の高さ / Credit: Robert A. Gastaldo et al., Current Biology(2024)

それでもガスタルド氏は、このユニークな植物について「地球の歴史の中に、私たちが見たこともないような姿をした木がまだまだ存在していることを思い出させてくれるもの」と述べています。

生命の歴史は”実験”の繰り返しであり、突飛な姿をした動植物は過去にたくさん存在しました。

しかし、その突飛さは弱肉強食の世界を生き抜く上では不利に働くことがほとんどで、複雑すぎる生命はその度に地球上から姿を消していったのです。

ただ、彼らが存在した証は化石として確かに残っており、今日の私たちにそのユニークな姿を見せてくれています。

参考文献

Rare 3D fossils show that some early trees had forms unlike any you’ve ever seen

‘We were gobsmacked’: 350 million-year-old tree fossils are unlike any scientists have ever seen

元論文

Enigmatic fossil plants with three-dimensional, arborescent-growth architecture from the earliest Carboniferous of New Brunswick, Canada

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。