「コンビニに無意識に通ってしまうことで大切なものを失うことがある」ーー心理カウンセラーで、時短家事コンサルタントの下河内優子(しもかわちゆうこ)さんはそう語ります。
流行や消費者の細かなニーズにこたえ、さまざまな商品を豊富に取り揃えたコンビニエンスストア。24時間365日営業している生活に根ざした小売店でありながら、ATMを備え、公共料金の支払いやマルチコピー機でのチケット販売、コピーや写真印刷、宅配便受付、ネット通販などで購入した商品を受け取る……コンビニで、できることは枚挙に暇(いとま)がありません。
多くの人が利用する便利なお店を使うことで、いったい何が失われるのでしょうか?
本記事は前後編の前編。後編は2月21日18:00に公開予定です。
主体的な行動が取れなくなる?
ーー時短家事などのコンサルティングで「コンビニに通ってはいけない」とお話をされるとうかがいました。なぜコンビニに通ってはいけないのでしょうか?
下河内:通ってはダメ、とは言いませんよ(笑)。「今日はコンビニで、あのオリジナル商品を買おう」とか、意識的に選んだ行動なら、悪いことではもちろんありません。コンビニは本当に便利です。だからこそ、多くの人が、コンビニに立ち寄る理由や目的がはっきりしていない。意思や計画性を持ってコンビニに行くことが少ないのです。
ーーざっくりしたイメージで、「お昼に食べるものを買う」くらいで寄っているかもしれません。
下河内:「何を食べるか」「いつ、どこに何を買いに行くか」など行動の選び方は普段の思考につながっています。
‟なんとなく”コンビニに通うと、自分で主体的に計画を立てて、意思を持って行動する力を養えなくなってしまいます。コンビニだけではなく、世の中には魅惑的なキャッチフレーズをつけた商品があふれています。
そのなかから本当に自分の必要なものを取捨選択して、たったひとつ「これ」というものを取り込む、または「必要ない」と遮断することが大切なんです。
その力を鍛えないと、会社での働き方であれば、上司に言われたことはこなせるけれども、自ら提案していくような主体的な行動が取れなくなります。
モノがあふれて思考停止してしまう悪循環
ーー失うものは、決断力や行動力。日常の何気ない行動が、取捨選択のトレーニングだということですね。
下河内:目的をもたずに無意識に立ち寄っていたとしても、きちんとその理由を自問自答すると、何かしらの理由があるはずです。
もし、暇つぶしだとしたら「何か習いごとに挑戦しよう」、話題を求めているのであれば「本や雑誌を読んでみよう」と、行動を変えていくことができます。
ーーなんとなくスマホを見ていてあっという間に時間が経ってしまうことも同じですか?
下河内:スマホをダラダラ見ても大丈夫(笑)。「15分休憩しよう、その間はスマホを見る」と決めてとった行動であれば何も悪くありません。
たとえば、100均も楽しいですよね。安くて、そこそこいいものが大量に並んでいます。どれも天才的なキャッチコピーに彩られています。「何に使いたいのか」、目的意識を持っていないと、うっかり不要なモノまで買ってしまい、家のなかはモノだらけになってしまう。
ーーうーん……。耳が痛くなってきました。
下河内:わかりますよ!(笑)。モノが多いと、視界に入るものが増えます。モノも「情報」なんです。家が情報であふれると選択肢が増え、人は混乱して疲れてしまう。そうして思考停止に陥って、物事を深く考えることから逃げてしまうことになります。
そうすると、主体的な行動が取れなくなり、人から言われたことをやる、与えられたものを受け取ることが楽になって、ついつい流されてしまうんです。モノを見ると、思い出すものが何かしらありませんか?