日本は快適だけど……
日本の若者も、インドの若者を見ると間違いなく何らかの刺激を受けるはずです。
きっと自分よりも努力しているであろう人が、自分よりも圧倒的に給料が低いという現実を目の当たりにして、「世の中は平等じゃない、日本で生まれた自分がいかに恵まれていたか」ということに、日本を出て初めて気付くと思うんです。
海外にいるからこそ、今の日本に対して「めちゃくちゃ良い国だな」と思う一方、「なんかやばくないか」と感じる面もあるし、「おそらく海外の人は日本をこう見てるのかな」という感覚もわいてきます。
これから、もしかしたら外国人が日本にもっと移住してきて、外国人と一緒に仕事することが当たり前になるかもしれません。そんなときに、日本を一度も出たことがない、海外に住んだことがないというのは、かなり不利になる可能性もあると思うんです。
日本は超快適で、僕は日本に帰ってくるたびにワクワクします。こんな良い国は他にないなと。飯はうまいし、安いし、不便は感じないし、最高だな、と。
でも、どこか完成されすぎていて、その完成された街や利便性、コンテンツをただ受け入れているだけで、自分の命をつかって生きているという感覚を得にくい。インドに移住してから感じるようになったんですが、日本全体が「ディズニーランド」のように見えるんです。
完成された日本の街がなんとなくアトラクションのように見えて、完成されたエンタメや食をただただ消費しているような感覚に陥ってしまうことがあります。たまに行くとむちゃくちゃ楽しいんですが、ずっとそこにいると思考停止してしまって、貪欲さが失われてしまいそうな感じ。
仕事の楽しさも生活の喜びも人の成長がセットだと思うので、10年後、20年後、30年後を見据えたら、(日本人にとって)本当に豊かな国を維持できるのかどうか、危機感を覚えます。
快適なところにいればいるほど人は成長しません。自分もついついコンフォートゾーンに逃げたくなることがよくありますが、どれだけ不快な環境に身をおけるかが、個人としても、企業としても、成長できる要素の1つとしてあると考えています。日本の若者は、例えば短期間でも良いから海外に出て仕事をして、現地の人と自分なりに折り合いを付ける経験をすることはものすごく価値のあることだと思います。
インド人との付き合い方
日本人ってものすごく形式主義というか、たとえば会社で商談をするときも、フォーマルに身だしなみをして、企業を代表して相手に失礼がないようにコミュニケーションの方法にも配慮をする。でも、インド人は、カジュアル&パーソナルなんです。いきなり仕事の話をするというよりは、お互いの家族の話をしたり、まずご飯を食べに行ったりします。
―――なんか楽しそうで良いですね(笑)。
個人的な関係がベースにないと、むしろビジネスがうまくいかない気がしますね。
なので、インドで新しい取引先との関係を構築したい時はご飯に誘って、家族の話をしたり、自分のプライベートをさらけ出したりした方が良い。
そこでは、どんな企業なのか、どの役職なのかは関係なく、相手個人と仲良くなることがものすごく重要で、その仲良くなった先にビジネスの話がしやすくなるんです。
あと、商談はトップ同士で人間関係を作ることも大事です。そこから、下におろして、チームで取引を進めていくのが良いですね。
日本では、たとえばお客様と初めて会ったときに、「LINEを交換しましょう」とはなりませんよね。
でもインドでは、WhatsApp(無料メッセージアプリ。イメージとしてはLINEに近い)を交換してメッセージを送ったり電話したりするところからスタートします。
「この人は」と思える人と出会えたときは、すぐにWhatsAppを交換して日本に帰ってからも定期的に連絡を取ること。もちろん直接会ってご飯に行くことも大事ですけど、会えなくてもWhatAppでつながっておき、定期的にプライベートな写真を送ったりしながら関係を育てていくことはとても大事です。
(相手と)関係ができると、いろいろな人を紹介してくれるし、それがビジネスにつながるケースも少なくないです。