恐竜の羽も「獲物の追い出し」に使えた⁈

実験では、ロボプテリクスの前に生きたバッタを置き、羽を動かす場合と動かさない場合でバッタの反応がどう変わるかを調べました。

チームはバッタを選んだ理由として、現代の鳥によるフラッシュ・パースート・フォレイジングに反応して逃げ出すことが知られており、またカウディプテリクスと同時代にも生きていたからと説明します。

そして数十匹以上のバッタを用いて実験を繰り返した結果、ロボプテリクスが羽を広げたときの方が圧倒的にバッタが逃げ出す確率が高いことが分かりました。

羽を広げなかった場合、バッタが逃げ出す確率は47%に留まりましたが、羽を広げた場合では93%のバッタが驚いて逃げ出したのです。

こちらが実験の様子。

さらに実験では、ロボプテリクスの黒い羽に白い斑点模様を入れたり、前羽だけでなく尾羽の動きを加えると、バッタの逃げ出す確率はさらに上がったといいます。

今回はバッタの動きが観察しやすいように何もない地面に置いた条件で実験しましたが、これらの結果は恐竜の初期の羽毛にもフラッシュ・パースート・フォレイジングの機能があったことを示唆するものです。

羽毛恐竜たちは茂みの中で羽をバサバサすることで隠れている獲物を誘き出し、追いかけ回して捕食していたと考えられます。

また前足の翼は逃げ出した虫をハエ叩きのようにバシンとはたき落とすのにも利用できた可能性があるでしょう。

A〜F:羽で虫を誘き出す戦略をする鳥たち、G:現生鳥類で羽で誘き出す狩りができる種の生息分布(赤:地面、黄:茂み、緑:樹上)
A〜F:羽で虫を誘き出す戦略をする鳥たち、G:現生鳥類で羽で誘き出す狩りができる種の生息分布(赤:地面、黄:茂み、緑:樹上) / Credit: Jinseok Park et al., Scientific Reports(2024)

このようなに羽毛恐竜たちは狩りの中で羽毛を活用し、それが有用であったことから進化の過程で徐々に翼を大きくしていったと思われます。

その中でモモンガのような木から木へ飛び移る滑空に使えるようになり、そして最終的には空中を飛び回る飛翔能力を獲得していったのかもしれません。

参考文献

Scientists use robot dinosaur in effort to explain origins of birds’ plumage

Dinosaurs might have used feathers on forelimbs and tails to flush and pursue their prey, say biologists

Flush-pursuit foraging in birds(2018)

元論文

Escape behaviors in prey and the evolution of pennaceous plumage in dinosaurs

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。