地球上で最初に「羽毛」を獲得したのは鳥ではなく、恐竜です。
しかし恐竜が獲得した初期の羽毛に飛翔能力はなく、一体何のために使われていたのか、これまで大きな謎となっていました。
そんな中、韓国・ソウル大学校(SNU)の研究チームが、ロボ恐竜を使った実験で新たな説を提唱しています。
それによると、恐竜は羽毛を広げて茂みに隠れている昆虫を追い出し、姿を現したところを捕食する狩猟戦略に使っていた可能性が高いとのことです。
これは現代の一部の鳥が行う戦略で、もしかしたら羽毛恐竜が最初に発明した狩りの技術かもしれません。
研究の詳細は2024年1月25日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。
恐竜は何のために羽毛を進化させたのか?
古生物学者にとって、恐竜たちの”失われた行動”をこの世に蘇らせるのは至難の業です。
行動は生きた個体から得られる情報であり、化石だけをジッと見ていても恐竜がどんな動きをしていたかはなかなか理解できません。
中でも古生物学者たちは、恐竜が最初に進化させた「羽毛」の役割について長年議論を続けています。
この原始的な羽毛は主に2本の前足と尻尾に見られる小さなもので、現代の鳥のような飛翔に使えるものではありませんでした。
では彼らはどうして羽毛を進化させたのでしょうか?

これまでの議論では、自分自身や生まれたばかりの子供を温めるためとか、雌へのアピールというディスプレイの働きといった仮説が立てられています。
しかし本研究チームは、より直接的に生存に寄与するような機能があったと考え、新たな仮説を提唱しました。
それが「隠れた獲物を追い出す」というものです。
具体的には、羽をバサッと広げたり、羽ばたかせることで茂みに隠れた虫を驚かせて誘き出し、逃げまどう獲物を追いかけて捕食する戦略です。
これは英語で「フラッシュ・パースート・フォレイジング(Flush-pursuit foraging=追い出し・追いかけ採餌)」として知られ、ジャワハッカ(Javan myna)やマネシツグミ(Northern Mockingbird)など現代の一部の鳥が行っています。

そこで研究チームは、恐竜の羽毛にもこの機能があったかどうかを確かめるべく、ロボ恐竜を使った実験を行いました。
ロボ恐竜を作るにあたっては、約1億4400万〜9900万年前の白亜紀前期に生きていた羽毛恐竜の「カウディプテリクス(Caudipteryx =尾に羽毛を持つもの)」をモデルとしました。
カウディプテリクスは体長約1メートルで、2本の前足と尾に小さな翼があったことが分かっています。
これを元に開発されたのが、名付けて「ロボプテリクス(Robopteryx)」です。
では実験の結果を見てみましょう。