新型コロナウイルスが、良くも悪くも小売業界に大きな影響を与えている。ドラッグストアが軒並み業績を伸ばす一方で、百貨店などは苦しい状況が続いている。では、コンビニ業界はどうだろうか。大手3社の業績を見てみよう。
コンビニ業界全体の業績
新型コロナウイルスの感染拡大は、コンビニ業界にも暗い影を落としている。消費者が感染防止のために不要不急の外出を自粛していることで、業界全体の売上は前年割れが続いている。
弁当や総菜を販売するコンビニは外食産業の代替となっており、コロナ前と比べて客単価は上がっているが、それが全体的な売上の減少をカバーするには至っていないようだ。
各社とも間仕切りシートの設置やイートインの利用制限、レジ待ち間隔の確保、従業員の検温、マスクの配布など感染防止に力を入れ、消費者の安全・安心につながる取り組みを行っている。また、商品構成の再考やセルフレジの導入促進、ネットコンビニによる宅配事業の強化など、多方面からウィズコロナ時代の戦略を実行し、業績向上に努めている。
大手3社の業績と対策
コンビニ大手3社の業績と対策を見てみよう。
セブン-イレブン:第2四半期売上3.4%減 ネットコンビニ拡大へ
国内で2万店以上のセブン-イレブンを展開するセブン&アイ・ホールディングスが2020年10月に発表した2021年2月期第2四半期決算(2020年3~8月)によると、国内コンビニ事業は既存店売上が前年を下回り、営業利益は1,182億5,600万円で前年同期比10.7%減。自営店と加盟店の売上を合計したチェーン全店売上は、2兆4,454億4,400万円で同3.4%減だった。
月次の国内既存店売上高の前年同期比は、以下のように推移している。
2020年3月:96.8%
2020年4月:95.0%
2020年5月:94.4%
2020年6月:101.0%
2020年7月:94.9%
2020年8月:100.0%
2020年9月:102.4%
2020年10月:94.0%
2020年11月:97.6%
緊急事態宣言が発令され、全国的な自粛要請があった5月を底に売上は回復し、9月に前年同月比2.4%増を記録したが、第3波が起きた10月は6%減、11月は2.4%減だった。客数は同83.0~94.5%で推移しているが、客単価は5月の113.7%を筆頭に、3月以降はすべての月で前年を上回っている。
利用客の行動の変化に対応した商品開発や品揃え強化に加え、加盟店に対する感染防止対策物資の支給や経済的支援に注力している。また、宅配を行うネットコンビニ事業のテスト対象エリアを、従来の北海道と広島県から東京都の一部店舗にも拡大した。
巣ごもり需要でネット通販が伸びる中、既存の店舗網を生かしたスピード宅配でウィズコロナ時代に立ち向かう方針だ。
ローソン:第2四半期売上7.2%減 日常生活用品を強化
ローソンが2020年10月に発表した2021年2月期第2四半期決算(2020年3~8月)によると、国内コンビニ事業の営業利益は137億5,200万円で、前年同期比53.5%減。チェーン全店売上高は1兆918億9,800万円で同9.2%減。
月次の国内既存店売上高の前年同期比は、以下のとおりだ。
2020年3月:94.8%
2020年4月:88.5%
2020年5月:89.8%
2020年6月:94.2%
2020年7月:91.1%
2020年8月:91.3%
2020年9月:94.5%
2020年10月:93.1%
2020年11月:95.3%
セブン-イレブン同様、4~5月を底に回復基調にあるものの、月次では前年割れが続いている。利用客の購買行動分析によると、店舗の近隣に住む利用客の来店が伸びており、巣ごもり需要によって紙・生理・衛生用品や冷凍食品、調味料、機能簡易食品といった日常生活を支えるカテゴリーの売上が前年同期比で110%を超えているという。
巣ごもり需要・買いだめに対応するため、生鮮品、冷凍食品、日配食品、酒類、常温和洋菓子の5カテゴリーを強化し、日常生活需要とコンビニ需要を取り込める店舗づくりを進める方針だ。
ファミリーマート:第2四半期営業収益11.2%減 内食・外食需要に対応した商品展開強化
ファミリーマートが2020年10月に発表した2021年2月期第2四半期決算(2020年3~8月)によると、事業利益は321億8,900万円で前年同期比30.5%減、営業収益は2,356億8,900万円で同11.2%減だった。
月次の国内既存店売上高の前年同期比は、以下のとおり。
2020年3月:92.4%
2020年4月:85.2%
2020年5月:89.0%
2020年6月:91.8%
2020年7月:89.2%
2020年8月:92.3%
2020年9月:95.3%
2020年10月:93.9%
2020年11月:95.4%
ファミリーマートもローソン同様、前年割れが続いている。厳しい状況が続いているが、下げ止まりが見られる。コロナ対策としては、生活応援セールの実施やイートイン売場での商品展開のほか、総菜メニューの強化による内食需要対応や有名店監修商品の展開による外食需要対応を進めている。
下期は需要が高まっている中食主体の食料品を中心に、売場構成や品揃えの見直しを行う方針だ。
今後のコンビニ業界の展望は?
3社ともコロナの影響を受けつつも、内食・外食需要や日用品需要を取り込んでおり、セブン-イレブンを筆頭に業績回復の兆しが見える。全国に広がるコンビニネットワークが、ウィズコロナ時代の新たな需要の応え始めているのだ。
8月には、大手コンビニ3社が新たな物流の効率化・最適化に向けて共同配送の実証実験を行うなど、協調体制を模索する動きもある。環境負荷の低減が主な目的だが、その成果は業績にも反映されるだろう。新たな時代への順応を図る各社の取り組みに期待したい。
執筆・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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