冬眠していた生き物たちが土から顔を出す目覚めの季節「啓蟄」が近づいてきたが、なんとこの夏、全米でセミの大量発生の可能性があるという。1兆匹ものセミが全米の大地で大合唱を繰り広げるというのだ。
■2種類のセミが221年ぶりに同時に羽化
夏の風物詩のセミだが、我々の前に姿をあらわし鳴き声を披瀝する時期は、実はその一生の終末期である。羽化したセミの成虫が生きられるのは3~4週間ほどであり、その間に交尾をしてメスは卵を産まなければならない。
まさに“最後の大仕事”をするためにセミは成虫になるのだが、それ以前は十数年以上も幼虫として地中で過ごしている。セミ的には幼虫として土の中で過ごしている時間のほうがメインであり“通常モード”なのである。
そして種によって土の中で過ごすサイクルも違ってくる。
たとえば「Brood XIII」は17年、「Brood XIX」は13年のライフサイクルで羽化しているのだが、なんと今年のアメリカではこの2種のセミが221年に一度、同じ年に羽化するというイベント“二重羽化(dual emergence)”が見込まれているのだ。

1803年以来で初めて、2つの別々のセミの羽化のスケジュールが一致するため、この春、アメリカ中西部と南東部全域で1兆匹以上のセミが羽化する可能性があるという。早ければ4月下旬からその兆候が見られるということだ。
専門家らは、二重羽化として知られるこの出来事により、2種のセミが交雑する可能性があると「ニューヨーク・タイムズ」に語っている。とすれば将来的にセミの個体数が増えることもあり得るのだろうか。
スミソニアン国立自然博物館の昆虫学者でコレクションマネージャーのフロイド・ショックレー氏は「適切な環境下で、適切な数の個体を交雑させれば、新たな周期に合わせた新たな子孫を生み出す可能性があります」と説明する。
7種からなる周期セミは、生涯のほとんどを幼虫として地中で過ごし、木の根からにじみ出る滋養たっぷりの樹液を摂取している。13年または17年間、地中で過ごした後、その生涯の終末期に地表に這い出してきて成虫に変わる。「ニューヨーク・タイムズ」紙によると、成虫のオスは体の側面の膜を振動させて大きな鳴き声を上げ、メスを引き寄せるという。こうして成立したペアが交尾を終えるとメスは卵を産むのだ。
成虫のセミは3~4週間ほど生存し、卵が孵化するのを見る前に生涯を終える。新しく孵化した幼体は地面に落ちてから土の中に潜り、幼虫となって長い期間を土の中で過ごすのである。