GPSデータを発信していない物体に接近できるのか
ADRAS-Jのミッションの難関は、対象となる物体が自身のGPSデータを発信していない非協力物体である点だ。
非協力物体は正確な位置が不明であるため、今回のミッションでは、おおよその位置を地上局からの観測データをもとに判断することになる。しかし、地上からの観測による位置情報は軌道上での観測ほど正確ではない。その限られた情報をもとに、距離を詰めていく必要がある。
そこでADRAS-Jは、ナビゲーションセンサやランデブー機能などの技術を搭載。RPO(ランデブー・近接オペレーション)や航法(ナビゲーション)に最適化したセンサ・カメラを、超長距離を含む複数の距離範囲で使用できる。
推進システム“スラスタ”のうち、相対的に位置を制御するための斜め向きのスラスタ(8本)と、効率的に大きな推力を生んで大きく軌道を変更するまっすぐなスラスタ(4本)を使い分け、ダイナミックかつ繊細な動きを可能にする。
こうした技術を活用し、ミッションでは対象デブリへの接近、定点観測・周回観測、そしてロケット上段PAF部分への最終接近実験を実施。最終的には、対象デブリ近傍から離脱して安全な軌道に移動し、ミッションを終了するという。
アストロスケールは2023年10月に東京本社からADRAS-Jの出荷を完了。現在はニュージーランドにあるRocket Labの施設にて、打上げに向けた最終準備を進めているほか、東京の拠点においても、ミッション運用に向けた確認作業を行っている。今後もADRAS-Jのミッションの動向を追っていきたい。
参考元:
ADRAS-Jプレスキット
(文・Haruka Isobe)