作中に登場したバイクは自腹購入⁉︎ ナカモト監督のこだわり
――本作には、アクション監督として川本耕史さんも参加されていますが、構想段階からアクションシーンに力を入れたものを撮りたいという思いがあったのでしょうか。
ナカモト:そうですね。アクション監督は、当初からちゃんとした方にお願いしようと思っていました。 一方で予算の問題もあるので、大御所みたいな方にはお願いできないかなと思っていて、最初は知人のアクション監督にお願いするつもりだったんです。
何人か候補がいたんですけど、この映画の制作時期がとある大作映画の制作に被ってしまっていて。そうなると、日本中のアクションマンが出払ってしまうので、全員都合がつかないということで断られてしまったんです。
その映画を撮っている監督に直接相談したら、「じゃあ川本君が空いてるはずだから紹介するよ」って。川本さんは最近は海外の作品が多かったのですが、ちょうど撮影が終わって日本に帰国しているタイミングだったらしく、 紹介していただけることになったんです。
だから、この規模じゃ声を掛けることができないようなアクション監督やアクションマンの方に協力していただけたっていうのは大きいですね。

――一方で作中にはバイクもかなり登場しますよね? 都市伝説というテーマ然りバイクがたくさん出てきたりと、全体的にレトロポップな印象を受けました。
ナカモト:そこは意識しましたね。登場人物たちの衣装も、最近のイケてるファッションっていうよりも、ちょっと平成初期っぽいような感じの服装にしたくて、最初にスタイリストの方に相談しました。
バイクもそうですね。僕、今日もバイクで来たぐらいバイクが好きなんですけど、ヤンキーって、ちょっとやんちゃなスクーターに乗ってるイメージがありませんか? でも、もう少し可愛いほうがいいだろうなと思って、敢えて主人公はホンダの“ゴリラ”っていう原付に乗ってる設定にしてみたりとか。
どうしてもこの映画にゴリラを登場させたくて、これ僕、自腹で購入したんですよ(笑)。
――ええ! そんな撮影秘話が(笑)。レトロポップを意識したとのことですが、それは特定の客層を狙ってなど何か目的があったのでしょうか?
ナカモト:僕はもう30代なんですけど、やっぱり同年代の人にも刺さるようにっていうのは考えましたね。ブームって20年周期で変わっていくってよく言われると思うんですけど、30代の人にウケるような小ネタを入れたり。あと、僕の好きな昔の映画をリアルタイムで見ていたような、少し年上の方にも楽しんでもらえるような作品にしたかったので。
あとは本当、若い人にもね。たとえば主演の木戸大聖君とか、役者の黒崎さんとか上野くんとか。彼らのファンの方にも見ていただきたかったので、低予算のホラー映画でどれぐらい反響あるのか、正直未知数ですが、そういう子たちにも面白いと思ってもらえるものを描けていたらいいなと思います。

影響を受けた映画は『ターミネーター2』 登場人物の魅力に注目!
――昔の映画がお好きということですが、特に影響を受けた作品についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
ナカモト:普通に好きな作品でも大丈夫ですか? 僕が今までの人生で、いちばんよく見た映画は『ターミネーター2』です。子供の頃はVHSを何度も繰り返し見て、一時期は吹き替え版のセリフを全部覚えちゃってたぐらい。
なので、今回の作品でも、口裂け女がバイクを追いかけるシーンは『ターミネーター2』のT-1000がジョン・コナーを追いかけるイメージなんです。役者の方やスタッフにも「このシーンは『ターミネーター2』っぽくお願いします」と伝えてました。

――意外なところからあの印象的なシーンが生まれていたんですね。他に思い入れのある場面はありますか?
ナカモト:アクションシーンはこだわりましたけど、そこはアクション監督の川本さんが撮ってくださったので。僕はジャッキー・チェンが大好きなので、アクションシーンにも笑えるようなくだらないギャグを入れたくて、そういうのを考えるようにしてました。
――ホラー映画なのにクスッと笑えたり、怖いのが苦手な方でも楽しめる作品に仕上がっていますよね。
ナカモト:そうですね。そこに対して、僕はすごく言いたいというか、伝えたい思いがあるんです。僕自身、ホラー映画が好きなので、スプラッターとかR-18の作品をよく見るんですよ。ちょっと変なこと言うんですけど、海外の作品なら公開初日に見に行くぐらいなのに、日本のグロテスクなホラー映画となると、なかなか足が伸びないんですよね。
――え、それはなぜですか?
ナカモト:やっぱり予算がないんでなかなかね。難しいとは思うんですけど、作品のクオリティ的に……。
予算なんて気にせず、過激な映画を撮ってみたい! という思いはもちろんありましたけど、自分が見に行かないのにそれはちょっと違うんじゃないかと考えて、今回は誰が見ても楽しめるような、あまり暗くなりすぎない構成を意識しました。
怖い描写もあるのでホラー映画ではあるし、アクション要素もあるんですけど、個人的にはヤンキー3人組の可愛らしいキャラクターに注目してほしいです。もともと登場人物の魅力が全面に出た作品を撮ってみたかったっていうのもあるので。
実際、本作もPG-12にはなっていますけど、未成年が犯罪行為に関わるシーンがあるからという理由で年齢制限が設けられた感じなんですよ。
