自傷行為を引き起こすコレステロール
そして今回、ワン氏の研究チームはタコの視柄腺のRNAトランスクリプトーム解析を行い、タコの母親が卵を産む頃に起こった3つの化学的変化を発見した。
1つめの変化は多くの生物の生殖に関連する2つのホルモンであるプレグネノロンとプロゲステロンのレベルの上昇であった。ちなみに人間の場合、プロゲステロンは排卵中と妊娠初期に上昇する。
2番目の変化はさらに驚くべきものであった。母親のタコは、7-デヒドロコレステロール(7-DHC)と呼ばれるコレステロールの構成要素をより高いレベルで生成しはじめたのだ。人間もコレステロールを作る過程で7-DHCを生成するが、人体に有毒である7-DHCを体内に長期間保持することはない。しかしこの時期のタコは身体の中にこの毒物をため込んでいたのである。
3つめは視柄腺が胆汁酸(人間や他の動物の肝臓で作られる酸)の成分をより多く生成しはじめたことだ。
「これは、これがタコのまったく新しい種類のシグナル伝達分子であることを示唆しています」とワン氏は述べた。
胆汁酸の成分が興味深いのは、同様の一連の酸が線虫(カエノラブディティス・エレガンス)の寿命を制御することが示されているためであり、胆汁酸成分は無脊椎動物の種全体で寿命を制御するのに重要である可能性があるとワン氏は説明する。

「これらの経路が得られたので、私たちはそれらを個々の行動、あるいは動物がこれらの行動をどのように表現するか、個体差と結び付けることに非常に興味を持っています」とワン氏は「Live Science」に語っている。
コレステロールを作る過程で生成される7-DHCが体内に残存したままになる遺伝性疾患である「スミス・レムリ・オピッツ症候群」を持って生まれた乳児は、余分な指や足の指、口蓋裂などの身体的異常の可能性に加えて知的障害や自傷行為を含む問題行動にも及ぶことが報告されている。7-DHCを高いレベルで身体に保持している母親のタコもまた自傷行為に駆られているのかもしれない。
「その種の視柄腺の動態を研究することに本当にとても興奮しています」とワン氏は語る。
タコの「死に至る病」が解き明かされたのだが、こうした内分泌系と代謝の研究から“自殺”を防ぐアプローチもまた興味深いのかもしれない。
参考:「Live Science」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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