外語大出身者の活躍範囲は広い。学んだ語学を使わなくても、その視点は生きる糧となる

 就職先にはやはり海外赴任や海外とのやりとりの多い企業・機関が並ぶが、かといって学んだ語学に直接関連する仕事についている人ばかりではないようだ。

「たとえば東京外語大でアラビア語を学んだ人がみな、就職してすぐ中東に赴任すると決まっているわけではありません。ただし、勤務先が日本国内でも欧米でも、グローバル企業であれば中東についての知識を役立てることはできますし、アラビア語を使う局面もあるでしょう。近年では外語大からIT業界への就職が増えています。発注先の国は多岐にわたりますし、日本企業が海外からの発注を受けることもあるので、外語大出身者が活躍するチャンスはむしろ豊富です」

 最近では飲食チェーンの海外進出も盛んになっている。外語大出身者の進出先はますます多岐にわたっていくだろう。トップ校以外の外語大で特徴的なのは、航空業界、つまりCA(キャビンアテンダント)を志望する女性学生の多さだ。

「京都外語大や関西外語大、独協大外国語学部、神田外語大などはCA予備校と表現しても間違いはないくらいです。このなかでも特に関西外語大は航空業界各社との連携を強めており、就職実績を宣伝することで学生を集めてきました。CAを目指す女子学生には不動の人気を誇る、ユニークな存在です」

 最後に、コスパという基準から少し距離を取り、改めて外語大に通う意義や魅力について石渡氏に聞いた。

「外語大が外国との接点が非常に大きい教育機関であることは間違いなく、単に週に何コマか外国語を学ぶ一般の文系大学とはまったく異なります。外国語を身につけることと並行して地域についての知識を深めること、その過程で長期間の留学をして実地で地域や人々を知ることには、日本にいては得られない大きな意義があると思います。卒業後、仮に身につけた語学や知識を使わない仕事に就いたとしても、学びの期間に身につけた独自の視野・視点は、決してムダになることはありません。多大な努力以上の得がある大学だと、自信をもって言えます」

 世界はビジネスや友好関係と同時に、鋭い対立を続けながらつながっている運動体である。外語大で学ぶことによって、日本以外の言葉と価値観というレンズを通して世界を認識し、活動することができる。そこにはコスパ論を超えた価値があるということだ。

(文=日野秀規/フリーライター、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

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