あるメディアの記事で東京外国語大学が「コスパがワースト1の大学」にランク付けされたことについて、同大学出身がX(旧Twitter)にポストした内容が話題となった。記事では入試難易度や学費、就職先、収入、学生生活の充実度などを点数化してランク付けがされているが、投稿者は

<コスパなんて短絡的な軸で、私達は生きてない>

と受け流し、支持を得ているようだ。はたして、コスパでは量れない外語大の価値とは何だろうか。

 外語大および外国語学部を設けている大学は国内に30を超える。その代表格が東の東京外語大と西の大阪大学外国語学部(旧大阪外国語大学)で、いずれも国立大学だ。英仏独中などの使用者が多い言語から、アラビア語・アフリカ系言語などさまざまな学科がある。

 外語大の入試難易度は、上位校は京都大学・大阪大学など難関国立大の文学・歴史系学部と並ぶが、地方立地の私立大であればそこまで難しくはない。規模感は東京外語大で1学年750名前後、京都外語大で670名前後であり、毎年数千名単位の学生を迎える総合大学に比べると小ぢんまりとしている。就職先は商社やメーカー、金融、公務員など、一般的な文系大学の就職と大差ない面もあるが、旅行関係や国際機関に進む人が多いのは特徴といえるだろう。

「外語大はコスパが悪い」は早計。長い目で見ればむしろ良好といえる理由

 外語大の概略をつかんだところで、まずは外語大のコスパ論に移ろう。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏によると、大学進学のコスパを気にする人は実際に増えている印象があるという。

「『コスパ』という価値観は若年層の間ですっかり根付いており、大学進学を考える高校生の間でも当然に意識されています。就職実績が良い一方で、勉強があまりきつくない大学はコスパが良いということになります。この尺度で見た時に、私は外語大のコスパが悪いとはまったく思いません。外語大の就職率は90%を超えており、進路を見ても就職実績は総じて非常に良いといえます」

 たとえばトップ校である東京外語大であれば、その就職実績は東京大学や一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学などの難関大学に比肩する。総合商社や、グローバルにビジネスを行っている専門商社・製造業など、名だたる名門企業が就職先に並んでいるのだ。外語大のなかでも上位校であれば、就職活動において「学歴フィルター」で門前払いを食らうようなことはないと石渡氏はいう。パフォーマンスは至って良好ということだ。

「勉強については、他の上位大文系学部に比べると大変なのは間違いありません。外国語を身につけるという明確な到達目標があることに加え、休学をしたうえで短くても半年~年単位で留学して学ぶ学生が多いのです。その分勉強量が多くなることをコストとしてとらえるなら、他の文系学部よりコスパが悪いと表現することはできますが、就職後の人生で有益な知識や語学を身につけるための正当な努力が相応に報われる環境だと、私は思います」

 留年も含めて、企業側は外語大出身者の努力を評価して採用している。長い目で見れば、外語大のコスパはむしろ良いほうだと石渡氏は強調する。