先行きを不安視する日産の社員たち

 その後、激しい社内闘争が表面化する。内田社長がグプタ氏の自宅にカメラを設置して監視していたなどと書かれた内部告発文書が社外取締役などに送付され、一部マスコミにも流出した。また、グプタ氏が社員に対するセクシャルハラスメントを行っていた疑惑も浮上した。

 権力争いが繰り広げられるなか、3月末までに予定していたルノーとの資本関係見直しの最終契約も締結できない状況が続いた。指名委員会は、内田社長の活動もあってグプタ氏を取締役候補から外すことを決定した。それでもグプタ氏はCOOに残留することを強く求めたが、それも叶わず、日産は6月16日にグプタCOOが「新たなキャリアを追求するため(定時株主総会が開かれる)6月27日をもって退社する」と発表した。日産のある幹部は「高額な退職金と引き換えに、黙って退任することを受け入れた」という。定時株主総会では、退任するグプタ氏に発言を求める株主もいたが、議長を務めた内田社長が発言させなかったという。

 グプタ氏の退任後、日産が発表した新しい経営体制では、後任となるCOOは置かず、内田社長に権限を集中させることになる。カルロス・ゴーン元会長の不正発覚を機に業績不振に陥った日産の経営再建を主導してきたナンバー2が不在となり、先行きを不安視する日産の社員は少なくないという。日産の取締役会は、内部告発文書や、これが社外に流出した経緯についても第三者に調査を委託しており、この内容によっては取締役会でももう一波乱ありそう。この難局に内田社長で乗り切れるのか、不安視する声が後を絶たない。

(文=桜井遼/ジャーナリスト)

提供元・Business Journal

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