株式投資の世界には、テンバガー（株価が10倍に上昇する株）という言葉が存在し、投資家であれば一度は夢見る存在だ。テンバガーと聞くと、ジャスダックやマザーズのような振興株市場の銘柄が大半で、値動きが荒く、リスクの高い銘柄を想像するかもしれない。

しかし、国内株式市場で最も審査基準の厳しい東証一部の中にも、この数年でテンバガーとなった銘柄は数多く存在する。私が独自に調べたところ、2016年5月27日現在の東証一部銘柄の中で、過去10年間の最安値と最高値を比べて、10倍以上に上昇していた銘柄数を調べると、100銘柄以上が該当した（この間に株式分割や株式併合が行われた場合には、分割調整後の株価の推移を比較した）。東証一部の上場株式数が2000銘柄弱であることを考えると、実に20銘柄のうち1銘柄がテンバガーになったことが分かる。以下に具体的な銘柄と、その株価の推移を見てみたい。

こんな身近な銘柄もテンバガー?　見るべきは「月足チャート」

過去10年においてテンバガーとなった銘柄で、私が最も注目したのは、先日「SUBARU」への社名変更で話題になった富士重工業 ＜7270＞ だ。この銘柄は、国内の個人投資家であれば誰もが知っている歴史ある自動車メーカーであり、2011年4月に402.0円の安値をつけた後、2015年12月高値5223.0円まで約13倍の上昇を見せた。富士重工業は、レガシィやWRX、SUBARU BRZなど、通好みの個性的な車を製造するメーカーである。ドライバーには固定ファンも多く、車を所有しながら愛着ある富士重工業の株を買い、とんでもない幸運に恵まれた人も少なくないはずだ。最近のテンバガーの中で、最も身近な銘柄の一つといえる。

この銘柄は、リーマン・ショック直後の2008年12月に過去20年の最安値である223.0円をつけた後に、上記2011年11月の安値402.0円をつけており、チャートパターン的には長期の押し目の形成、安値の切り上げという絶好の買い場を提供した。2011年11月安値以降は大きなチャンスだったといえる。

他には、良品計画 ＜7453＞ 、エイチ・アイ・エス ＜9603＞ 、ファーストリテイリング ＜9983＞ なども過去10年の間でテンバガーとなった銘柄だ。良品計画は日常生活全般に関わる無印良品を、エイチ・アイ・エスは格安旅行会社を、ファーストリテイリングはファストファッションのユニクロを展開しており、いずれも日本人には身近な会社である。これらの銘柄も、過去10年の間に、テンバガーとして株価を急上昇させた。

商品やサービスを愛用するとともに、資金を株式に投じていたら、資産が大きく増え、もっとその会社を好きになっていたことだろう。

ここまで登場した4つの銘柄は、10倍に上昇する過程において、当然のように見事な上昇トレンドを形成する。その様は、個人投資家が毎日見ている日足チャートではなく、月足チャートによって確認できる。つまり、投資家がテンバガーを手にするためには、日足チャートだけを見るのではなく、月足チャートを見る習慣が必要だ。残念ながら国内の個人投資家の多くは、月足チャートを確認する習慣がほとんどない。それゆえテンバガーを手に入れることができない。テンバガーを手に入れるために、月足チャートを確認する習慣を身に着けて欲しい。

テンバガーを手に入れるために

テンバガーに限らず、株価が急騰する局面において共通する1つの要素は、「新しい何か」だ。技術や産業の分野では、イノベーション（革新）が重視される。株式投資においても同様で、「新しい技術や製品、サービス」、「新しい市場」、「新しい文化や概念」などを提供することに成功し、新しい価値を生み出し、それが市場に評価される時、株価はそれまでとは全く違う新しい上昇を始める。

また、10倍への上昇を手にするためには、途中3倍や5倍まで上昇した時に、満足して利益確定していては、永久に10倍にはならないというジレンマも受け入れなければならない。今回上記で確認した銘柄は、10倍になるまでに、4~8年の期間を要しており、じっくりと保有を続ける忍耐力も持っていなければ、容易にテンバガーを手にすることはできない。

テンバガーに限らず、株式投資において最も難しい判断の1つが、利益確定だ。上記に解説したように、3倍や5倍になった時点で利益確定をしていては、永久に10倍になることはない。かといって、10倍への上昇にこだわり過ぎて、株価が下がり始めてもかたくなに保有していては、利益確定の機会を逸することもある。株式投資では、最高の利益を確定できることはないので、よりベターな利益確定ポイントを予め前もって決めておく必要がある。テンバガーを手に入れるために、具体的ないくつかの課題を準備して臨むのだ。

上記に書いたように、過去にテンバガーを達成した銘柄の月足チャートを確認すれば、その共通要素を見出すことができ、次のテンバガーの芽を探すことができるはずだ。具体的な準備を行い、確認と行動を続ければ、いつかあなたにもテンバガーを手に入れるチャンスが訪れるはずだ。

文・松下 誠（まこと投資スクール株式会社　代表取締役）／ZUU online

【関連記事 PR】
・【初心者向け】ネット証券おすすめランキング
・ネット証券比較――手数料、ツール、シェア数ランキング
・ネット証券会社比較　手数料の安い4社
・証券会社のネット口座開設数ランキング1位は？上位5社
・ネット証券会社のシェアランキング1位はSBI証券