ロシアでは昨年8月23日、「24時間反乱」を主導した同国の民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏(当時62)が搭乗していた自家用ジェット機の墜落で死去し、ブリゴジン氏一代で築き上げたワグネル帝国の歴史は閉じたが、ロシアのプーチン大統領はウクライナ戦争で兵力不足が深刻な時、戦闘に長けたワグネル傭兵部隊を消滅させるのは惜しいということから、ワグネルを「アフリカ軍隊」と改名し、民間軍事会社のプライベートな軍隊ではなく、ロシア国防軍の直属の軍隊として利用していることがこのほど明らかになった。

モスクワを公式訪問したチャドのマハマド・イドリス・デビー暫定大統領と会談するプーチン大統領(2024年1月24日、クレムリン公式サイトから)
以下、ドイツ民間放送ニュース専門局ntvのヴェブサイトに掲載されたシモーレ・シュリンドヴァイン記者の記事(2024年2月5日)を参考に「アフリカ軍団」について紹介する。
ワグネル問題の専門家、ジョン・レヒナー氏によると、ワグネル傭兵部隊はブリゴジン氏を失って以来、大きく変化したが、1つだけ残っているのはナチス・ドイツとのイデオロギー的なつながりだという。新しい部隊は「アフリカ軍団」と呼ばれ、ヒトラーのアフリカ遠征とエルヴィン・ロンメル元帥の下で第2次世界大戦中、北アフリカで驚異的な戦果を挙げた部隊名に基づいている。「ワグネル」という名前は、第3帝国の美学を形作ったドイツの作曲家リヒャルド・ワーグナー(1813~1883年)に由来しているが、「アフリカ軍団」という呼称も同様にナチス時代とのつながりがあるわけだ。
「アフリカ軍団」は2023年11月23日、ロシア名「アフリカンスキー・コルプス」として導入された。新しいロゴはアフリカ大陸を表している。そして設立の目的は「テロとの戦い、インフラの構築、人道問題の解決、特定の地域での疫学調査」等々を任務にしている。将来的には「アフリカ軍団」は経済パートナーとの協力に利用され、特にエネルギーと技術主権の分野で「アフリカ経済に有益な効果」をもたらすだろうという。要するに、アフリカ軍団はロシア政府の直接管轄下にあるわけだ。
元ワグネル傭兵はアフリカ軍団と新たな契約を結ぶ。目標は2万人以上の新入兵士を採用することだという。給与は28万ロシアルーブル(約2800ユーロ相当)だ。同軍団は戦車操縦手、砲兵、無人機操縦士などの専門兵士を募集している。
エフクロフ国防次官はここ数カ月、アフリカを広範囲に旅行している。エフクロフ次官は、国外でのロシア反体制派の標的殺害を担当する軍事諜報機関GRUの特殊部隊の責任者を長年務めたアンドレイ・アヴェリヤノフ少将とともに昨年8月22日、同国の最も重要な戦略地域の一つであるリビアを訪問した。ベンガジではワグネルの同盟者であるリビア東部の軍事組織リビア国民軍(LNA)の反乱軍指導者ハリファ・ハフタル司令官に会い、モスクワとの緊密な関係を新たな名称の下で継続すると確約したという。
エフクロフ国防次官の代表団は2023年8月から12月にかけてリビアから中央アフリカ共和国を経由してブルキナファソ、マリを経てニジェールまで、ワグネル傭兵部隊が駐屯していた国々を歴訪した。9月にはマリ、ニジェール、ブルキナファソのサヘル諸国がロシアと防衛協定を結んだ。現在、3カ国とも軍事政権が主導しており、1月末には3カ国とも防衛同盟でもある西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)からの脱退を宣言した。先月24日はチャドのマハマド・イドリス・デビー暫定大統領がモスクワを訪れ、プーチン大統領と会談した。