日本では近年すっかり浸透したオンラインカウンセリングサービス。プロのカウンセラーやセラピストとユーザーとをマッチングするデジタルプラットフォームやアプリなどが展開されており、時間に余裕がない、クリニックが近くにないなど、物理的に通院が困難な層の需要を満たしている。また、診察を受けていることを近親者に明かせない人が匿名で相談できるといったメリットもある。
一方、日本を含むアジア地域同様かそれ以上にメンタルイルネスへの偏見が根強い中東各国(MENA)でも、オンラインカウンセリングビジネスが活況を呈している。このビジネスが中東で芽吹いてから10年、スタートアップの新規参入が今も止まらない。

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ムスリム圏でスティグマ化されたメンタルイルネスへの課題
保守的なアラブ社会では、精神疾患はアルコール中毒や金銭的破綻よりも恥ずかしいこととしてスティグマ化され、口に出すことさえもタブーとされている。若者に多い一過性の精神状態と軽んじられたり、信仰の欠如とみなされたりすることもあるため多くの人々が適切なケアを受けられずにいた。たとえ適切なケアにアクセスできたとしても、治療費が高額すぎるという問題もあるという。
その中で注目されたのが、プライバシーを守れる“オンラインでのカウンセリング”だ。1対1だけでなくカップルや家族でも受けられるほか、従業員のメンタルヘルスを改善する目的で導入する企業顧客も多い。現在では、ヨガや瞑想・睡眠アプリなど広義のものを含めると、オンラインのメンタルケアサービスにはMENA全体で30社ほどが参入している。
最古参はエジプトを拠点とするShezlong。2014年創業の同社が運営する同名のプラットフォームは、ローンチ時は登録セラピストがわずか3人だった。それが今では350人のセラピスト、85か国以上に合計120万人ものユーザーを抱えるまでに成長を果たした。2020年にはシリーズAラウンドにて資金調達を成功させている。

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サウジのスタートアップLabayhは2018年創業。創業者である元エンジニアのAl Beladi氏は2016年に米国でバイク事故に遭ってしまう。1か月後に帰国したものの心的外傷後ストレス障害 (PTSD)を発症。米国在住の医師にオンラインで治療を受けて回復し、事業のアイデアが浮かんだという。2023年にはUAEの瞑想アプリNafasを買収するなど、ユーザーベースとサービス分野を拡大している。

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女性起業家たちも活躍している。アラビア語で「手助け」を意味するAyadiはクウェートで2020年に創業された。創業者のLatifah Al Essa氏は認知心理学者として10年以上のキャリアを持つ人物。セラピストとしての視点とケアを必要とする個人の視点を兼ね備えるという強みがある。彼女の祖父がアルツハイマーを発症した際、セラピストを見つけるのが非常に困難だったことが起業のきっかけとなったようだ。

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