歌手の命を奪った毒蜘蛛の正体は?

 モライスさんは生前、頬の噛み跡を撮影した画像をSNSで公開した。蜘蛛に噛まれた皮膚は真っ黒になり、痣のようになっていた。このような症状を引き起こす毒蜘蛛の種類は明らかとなっていない。しかし、ブラジルには「世界で最も危険な蜘蛛」のブラジリアン・ワンダリング・スパイダー(クロドクシボグモ)が生息していることから、これに噛まれた可能性もある。

 ブラジリアン・ワンダリング・スパイダーはシボグモ科に属する蜘蛛で、ブラジルやアルゼンチンなどの中南米に分布する。バナナの葉でもよく見られるため「バナナ・スパイダー」としても知られる。足を広げると13~15センチの大きさになる。夜行性で獲物を待ち伏せして襲う性質を持つ。

 ブラジリアン・ワンダリング・スパイダーが有する毒は、ヒトにとっての致死量は0.1ミリグラムだ。しかも、この毒は異常な痛みや血圧の上昇、呼吸数の上昇、目のかすみ、痙攣などに加えて、勃起が何時間も続く持続勃起症も引き起こす。

毒蜘蛛に噛まれて死亡した歌手! 顔が真っ黒になる陰惨な画像がSNSで話題に=ブラジル
(画像=画像は「YouTube」より、『TOCANA』より 引用)

 ブラジルのミナス・ジェライス連邦大学の研究者らは、ブラジリアン・ワンダリング・スパイダーの毒に含まれる化合物「BZ371A」を合成することに成功した。ラットを使った試験では、ゲルに混ぜて股間に塗り広げると勃起が引き起こされることが確認された。BZ371Aなどによって体内の一酸化窒素が放出され、生殖器への血流が増加するために起こされる反応だ。バイアグラにも同様の作用がある。しかも、BZ371Aは高齢のラットや高血圧や糖尿病などの疾患を持つラットにも効果があり、同じ理由でバイアグラを服用できないヒトにも応用できる可能性があることが示唆された。

 ヒトの男性と女性を対象としたパイロット試験は実施済みで、BZ371Aを含むゲルをヒトが安全に使用できることが確認された。一方で、これがバイアグラの代替品になり得るかどうかを判断するには、さらに徹底した包括的な試験が必要だ。今後、勃起不全の男性を対象にした治療法の臨床試験が実施される予定だという。

 ヒトを死に至らしめる猛毒でも、その中には有益な物質や成分が含まれていることもある。こうした可能性を追求するためにも、モライスさんを死に至らしめた毒蜘蛛の正体を明らかにする必要があるだろう。これが人気歌手への追悼にもなるはずだ。

参考:「the Daily Star」、「the Daily Mail」、「ScienceAlert」、ほか

文=標葉実則

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提供元・TOCANA

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