装着者の声がほぼ聞こえなくなるマスク型デバイスの開発・発表が続いている。2022年に「Phasma」(現在は販売終了)を世に送り出したMETADOXは、東京ゲームショウ2023に最新型「OMBRA」を出展した。
日本企業としてはShiftall社がメタバース対応防音Bluetoothマイク「mutalk」を販売中だ。また、2023年11月にはキヤノンが装着型減音デバイス「Privacy Talk」のコンセプトモデルを発表。Makuakeで資金調達プロジェクトを実施し、目標金額の1095%達成(約1100万円)という結果を出している。
そして今年1月、「Skyted」が新たに登場し、CES 2024にて発表された。

Copyright : Skyted
Skytedは、BluetoothまたはUSBケーブルでスマートフォンやPCと接続し、マイクとして使用するマスク型デバイスだ。航空宇宙技術の応用により音声周波数の最大80%をカットする。iOSおよびAndroidに対応し、30分から1時間の充電で約10時間使用可能だ。
ジェットエンジンの騒音低減技術が“機内”でも効果を発揮
Skyted最大の訴求ポイントは、航空宇宙技術「LEONAR」(Long Elastic Open Neck Acoustic Resonator)を流用した点だろう。LEONARは、わずかな厚さでも低周波の音声を表面で吸収可能で、飛行機のジェットエンジンの騒音低減に用いられる吸音素材である。
防音マスクSkytedは開発にあたってフランス国立航空宇宙研究所(ONERA)、エアバス社、欧州宇宙機関(ESA)の支援を受けており、いろいろな意味で飛行機とのゆかりが深い。そもそも、「フライト中の通話を可能にしたい」という着想から生まれたものだ。

Copyright : Skyted
一方のサイモン氏は、フランス国立航空宇宙研究所ONERAの研究者としてLEONAR開発に携わった人物。元エアバス幹部のヘルセン氏とサイモン氏が2011年に出会って同社を設立、マスク開発に至ったという経緯である。
そもそも電車やバスでの通話さえ“ご遠慮”することに慣れた日本人からすると、機内通話の実現が航空会社の課題だったということ自体、意外に聞こえるかもしれない。だが、EU圏内ではまもなく自由に機内で通話できるようになる予定で、「機内モード」が過去のものになりかけているのだ。
もちろんEUでも、フライト中くらい静かに過ごしたい層と、飛行機での移動中に通話やビデオ会議ができたら助かるという層の間で論争になっていた。その問題を解決するのがこのSkytedというわけだ。