“死の聖母”を信仰する異端カトリック宗派がメキシコで急速に勢力を拡大し、バチカンはもとよりFBIもその動向を懸念している。この宗派はキリスト教などではなく“悪魔崇拝”のカルトであるというのだ――。

■“死の聖母”を奉るカルト「サンタ・ムエルテ」

 スペイン語で“死の聖母”を意味するメキシコの民族派カトリック教団「サンタ・ムエルテ」が近年急激に信者数を増やしながら勢力を拡大している。

 崇拝の対象となっている“死の聖母”は色とりどりのローブを着せられた人間の骸骨で、その傍らには鎌と地球儀が配置されている。英紙「Daily Star」の記事によればこの“死の聖母”は信じるすべての者を癒し、保護し、そして来世への安全な門出を約束しているという。しかしバチカンは、彼女の信者たちを黒魔術に手を出している悪魔崇拝者であると断定し、この偶像を“麻薬聖人(narco-saint)”と名付けた。

“死の聖母”を奉るカルト「サンタ・ムエルテ」の驚愕の実態――子供の生贄、殺人、麻薬密売、そして悪魔崇拝
(画像=「Daily Star」の記事、「Getty Images」より,『TOCANA』より 引用)

 実際に全国に散らばった麻薬組織がこの教団を隠れ蓑にしている証拠がいくつも挙がっているということだ。そして近年、サンタ・ムエルテは急速に信者を増やし本家のカトリック教会を脅かすほどに勢力を拡大しているのである。

 メキシコ主教区の会員で悪魔祓い師(エクソシスト)のアンドレス・ロペス司祭は、サンタ・ムエルテの多くの会員が「暗黙的あるいは明示的に」悪魔を崇拝していると警告している。同司祭はこのカルトは「殺人、犯罪、強盗、麻薬密売」などの罪と密接な関係があると説明しているのである。

 死後の世界で報われるために地上で良いことをするという一般的なキリスト教徒の信念に反対し、サンタ・ムエルテの信奉者たちは、現世の欲望を制限していないという。

 サンタ・ムエルテは“取引”を通じてメキシコの大衆に浸透しており、信者たちの崇拝、祈り、場合によっては金銭を含む奉納品の見返りに、病気が治り、さまざまな問題が解決され、子供たちが安全に守られることが約束されるという。

 しかしロペス司祭は、信者たちが求める「贈り物と富」には「悪魔との正式な契約」を結ぶという高い代償が伴うと主張する。供物の中にはタバコや酒が含まれることもあれば、恐ろしいことに人的犠牲が含まれることもあるという。

 信者らは聖者の死のために殺人を繰り返しており、2012年には“死の聖母”への生贄として10歳の少年2人と55歳の女性を殺害した疑いで8人が逮捕されている。その1年前にはアメリカに渡った2人の信者が“死の聖母”の黄金の像に覚せい剤を封入して密輸していた事件が発覚している。

 この凶悪な行為の背後には「多数の抑圧、強迫観念、悪魔憑きの事件」があるとロペス司祭は語る。司祭はこのカルトを「メキシコ版の悪魔崇拝」であると明確に定義して断罪しているのだ。

“死の聖母”を奉るカルト「サンタ・ムエルテ」の驚愕の実態――子供の生贄、殺人、麻薬密売、そして悪魔崇拝
(画像=アンドレス・ロペス司祭 「Daily Star」の記事より,『TOCANA』より 引用)