半導体=安全保障の物資
コロナ禍を契機に各国とも半導体供給網の再編強化を重点政策に据え、ロシアのウクライナ侵攻でその動きを加速させている。半導体を戦略物資として、従来にも増して明確に位置付けたのだ。
「半導体を小型のコンピュータと捉えると兵器に使える。例えばロケットに使うと飛ばしながら軌道を修正できて命中率が上がり、集積度が高くなればなるほど命中率も高くなる。このことが各国が半導体供給に力を入れている最大の理由で、アメリカでは国防総省が半導体製造に補助金を出している。『半導体=安全保障の物資』と捉えているのだが、日本政府は野党の反発を招くなど難しいため、この捉え方を打ち出せず、経済安全保障という言葉を使うようになった」(同)
経済安全保障推進の根拠法として、今年4月に施行された経済安全保障推進法は
・重要物資の安定的な供給の確保
・基幹インフラ役務の安定的な提供の確保
・先端的な重要技術の開発支援
・特許出願の非公開
の4つを柱に据えた。同法に基づいて指定された「特定重要物資」11分野に半導体も加わっている。10月には、経産省経済安全保障室が示した「経済安全保障に係る産業・技術基盤強化アクションプラン(案)」に「各産業等が抱えるリスクを継続的に点検し、安全保障上の観点から政府一体となって必要な取組を行う」として、次世代半導体のサプライチェーンの強靭化が盛り込まれた。さらに経産省は半導体の国内での安定供給を確保するため、20年に5兆円だった半導体生産企業の国内売上高の合計を、30年に15 兆円超に拡大する構想を掲げている。