中国・上海及び深センと東京に拠点を置き、日本と中国の企業に対してコンサルティングサービスなどを展開する会社「匠新(ジャンシン)」の代表を務める田中年一さん。
社外の知識やアイデア、技術などを取り入れ、新たな製品やサービス、ビジネスモデルなどを創造する“オープンイノベーション”を図り、企業や自治体、研究機関などが連携するエコシステムの構築を推進しています。
U-NOTE編集部は、匠新が日中のオープンイノベーションを進めるべくどのようなことをしているのか、中国のスタートアップ企業やユニコーン企業の現状などについて、田中さんにお話を聞きました(全4回中3回目)。
第1回「中国のベンチャー企業にとって日本市場が魅力的なワケとは 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(1)」
第2回「中国ユニコーン企業がAIとEコマースに強いワケとは 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(2)」
日本でユニコーン企業が少ない訳は
―――世界的にみると、日本でユニコーン企業(評価額10億ドル以上・創業10年以内で、株式市場に上場していないスタートアップ企業のこと)やベンチャー企業が少ないのは何故でしょうか?
以前中国のベンチャーキャピタル(将来性のあるベンチャー企業に投資する会社)の人から聞いて「なるほどな」と思った話があります。
彼によれば、事業が10億人以上のマーケットにリーチできるような会社はユニコーンのポテンシャルがあるとのこと。アメリカのスタートアップ企業は、グローバルのほぼ全てがマーケットの対象です。
中国は14億人、インドも14~15億人と自国の人口のみで10億人を超える一方で、日本は自国の人口の1億2000万人のみを見ているベンチャーがほとんどです。
そうすると、成長の天井が見えてしまって、なかなか(ユニコーン企業の定義である、企業価値)10億ドルに達しづらい。日本でユニコーン企業になっているのは、実際にグローバル展開をしているスマートニュースさんなどです。
(画像はhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000532.000007945.htmlより引用)
(ユニコーン企業やベンチャー企業が少ない理由の)2つ目は、日本の株式市場では評価額が小さくても上場出来てしまうというところ。
ユニコーン企業の定義として、(株式市場への)未上場という条件があります。
日本は、事業としての成熟度合いがそこまででなくても、上場基準を満たせば上場できるので、ユニコーン企業の条件を満たす前に上場してしまいます。
実際、上場したときの時価総額で多いのは、小さくて数十億円、大きくて数百億円というところ。10億ドルを超えてから上場する会社は、日本だと多くありません。
それは、上場してから事業を成長させていこうという背景もあると思います。
あとは国民性。実際にベンチャーをやってみたいと思う人の数とか、ベンチャー企業の成長を支えるベンチャーキャピタルのリスクマネーの大きさもあるのかなと。
―――グローバル展開を目指せるスタートアップがもっと増えていくためにはどうなっていけばいいのでしょうか。
もっと国際感覚を持った起業家が日本には必要だなと思います。そういう人がいないと、どうしても事業の立ち上げを日本国内前提に考えることになります。
国際感覚を持つためには、仕事だけじゃなくてプライベートでもどんどん海外に行ってみて、現地の人と交流したり、自分で体験したりしてみることを、もっと若い人がやらなきゃいけないんだろうなと思います。
ただ一方で、留学に行く人も減っていたり、大企業の日系事業会社の人と話すと最近の若い人は海外赴任の希望者が減っていたりすると聞きます。
「商社に入るってことは、海外に関心がある人がほとんどなんじゃないのか」と思っていましたが、商社に入っても海外勤務を希望しない若い人も増えてきていると言っていました。
行政もいろいろな支援を行っており、我々もJETRO(日本貿易振興機構)や地方自治体と進めていますが、日本の若い人が海外志向を持つような取り組みを進めていくことが、長期的な目線では必要です。