EコマースとAIが強いワケは?
―――中国でEコマースとAIが強い理由は何でしょうか。
まず、とくに日本だと、実店舗での販売や消費者体験が非常に優れています。一方、中国では、商業施設におけるユーザー体験があまり良くなく、オフライン(ここでは、実際に見聞きすることの意)でのサービスは日本ほど発展していません。
中国は国土がものすごく広いので、物を買いに行くにあたっては、お店が近いところに限られてしまうし、似たような商業施設が多いんです。
(そのため、)Eコマースの需要が大きくあって、アリババをはじめとして、ベンチャー企業がサービスを提供することでどんどん発展していきました。
あと、(商品について)ソーシャルネットワーク上での情報提供やユーザー間でのやり取りが盛んだったことも、飛躍的に伸びた背景にあります。
Eコマースでの取引では、非常に多くのデータがオンライン上に蓄積されます。中国の国民性として、より便利になるんだったら個人情報をプラットフォームに提供しても良いという意識があります。これは、日本とはかなり異なるところですね。
人口も非常に多いので、(Eコマースの利用で)ものすごい量のデータが蓄積されます。そのデータをサービスに活用していったことでAIが発展していきました。
加えて国としても、テクノロジーにおいてグローバル(世界)で中国が勝てる領域はAIだと考え、人材や産業育成をしています。
補助金があったり、海外でテクノロジーを学び、博士などの学位を取得してから帰国する留学生にさまざまな優遇措置が設けられているなど、国として「補強をしている」ことも、AI領域の強さの理由かと思います。
1月24日(木)掲載の第3回「日本にスタートアップ企業が少ないワケ、これからの起業家に必要なマインドは? 日中の“オープンイノベーション”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(3)」へ続く