中国・上海及び深センと東京に拠点を置き、日本と中国の企業に対してコンサルティングサービスなどを展開する会社「匠新(ジャンシン)」の代表を務める田中年一さん。

社外の知識やアイデア、技術などを取り入れ、新たな製品やサービス、ビジネスモデルなどを創造する“オープンイノベーション”を図り、企業や自治体、研究機関などが連携するエコシステムの構築を推進しています。

U-NOTE編集部は、匠新が日中のオープンイノベーションを進めるべくどのようなことをしているのか、中国のスタートアップ企業やユニコーン企業の現状などについて、田中さんにお話を聞きました(全4回中2回目)。

第1回「中国のベンチャー企業にとって日本市場が魅力的なワケとは 日中の“オープンイノベーショ ン”を推進するコンサルティング企業「匠新」代表・田中年一さんインタビュー(1)」

中国の新興企業の勢いは?

―――中国のスタートアップ企業やユニコーン企業(評価額10億ドル以上・創業10年以内で、株式市場に上場していないスタートアップ企業のこと)は世界的に見て多いのでしょうか。

スタートアップ企業については統計がないのですが、2022年末で、世界でユニコーン企業だとされる1,100社のうち、半数はアメリカの企業で、2番目に中国が続き、172社が認められている状況です。

中国のユニコーン企業が強いと評価される領域は、Eコマース(EC)・DtoC(Direct-to-Consumerの略。メーカーが卸業者などを通さず、自社のECサイトでユーザーに直接販売するビジネスモデル)と、AI、ハードウェア、EV(電気自動車)・自動運転です。

特にECとライブコマース(ライブ配信を利用した商品販売)が進んでいます。最近では、デジタルヒューマン(デジタル世界で、姿や声など人間のようにつくられたキャラクターのこと)のライブコマースで実用化されてきています。


日本企業・デジタルヒューマン株式会社によるデジタルヒューマンのイメージ

先ほど言ったとおり、日本は労働人口の問題もあって、人間の作業を代替するサービスに大きなニーズがありますが、日本企業では、まだこういった領域での実例が少なく、中国企業の日本展開が進んでいるところです。

AIについては、アメリカと中国が強く、この2国が(世界を)けん引している状況です。あと、スマートフォンに代表されるような電子機器や家電、EVといったモノづくりの領域は中国の強みです。もともと“世界の工場”としてサプライチェーンとノウハウの蓄積があります。

―――中国企業の海外展開はどれだけ進んでいますか?

徐々に増えてきており、今後もさらに増えていくだろうと思います。展開先となるのは、アメリカやヨーロッパ、加えて日本、韓国、東南アジアです。

最近その動きが活発になっている領域の1つはEVです。まあ、EVはベンチャーだけじゃなくて成熟企業でも進めていますが、輸出台数がどんどん増えてきているところです。

もともと自動車の輸出台数においては日本がずっとトップでしたが、2023年には中国がEVをメインに日本を抜いて1番となりました。


中国・広東省深圳に本社を置く企業・BYDの最新技術を結集したというEV「BYDSEAL」