中国・上海及び深センと東京に拠点を置き、日本と中国の企業に対してコンサルティングサービスなどを展開する会社「匠新(ジャンシン)」の代表を務める田中年一さん。
社外の知識やアイデア、技術などを取り入れ、新たな製品やサービス、ビジネスモデルなどを創造する“オープンイノベーション”を図り、企業や自治体、研究機関などが連携するエコシステムの構築を推進しています。
U-NOTE編集部は、匠新が日中のオープンイノベーションを進めるべくどのようなことをしているのか、中国のスタートアップ企業やユニコーン企業の現状などについて、田中さんにお話を聞きました(全4回中1回目)。
日中をつなぐ“匠新”とは
―――「匠新」を立ち上げた経緯を教えてください。
我々が事業を立ち上げた2015年は、日中間のオープンイノベーションや中国のスタートアップと日本の大企業との連携がほとんどない状況でした。
ただ、中国と日本では、それぞれ強み・弱みがあって補完し合うことができます。たとえば、とても厳密に品質管理をしている日本のマーケットでは、非常に安心感のあるブラ
ンドが育っています。
一方で、中国は品質管理よりも、「まず先にやってみよう」と失敗に寛容なので、新しいことをやるにあたっては、日本企業としても積極的に活用していけるんです。
どんどんデジタル(領域)で強くなっていく中国を参考にしたり、日本の独創性・クリエイティビティーを中国に持っていったり、そういった日中間のイノベーションにつながる交流がもっとあるべきなのに、なかなか起きていませんでした。
そういったイノベーションをもっと多く起こしていけば、日本と中国がWin-Winで発展していけると考えて「匠新」を立ち上げました。
―――事業内容を具体的に教えてください。
代表的な事業の1つは、日本の伝統的企業・大企業向けに中国のスタートアップ企業やユニコーン企業、学術機関、地方政府との連携を支援する業務です。これが弊社の事業ボリュームの8割ぐらいを占めています。
残る2割のうち、1割が日本のベンチャー企業向けの中国展開支援です。
日本のベンチャーが中国に出ていきたくても、独自に中国の巨大マーケットを開拓することは難しいので、現地の投資家や事業会社から投資や、経営資源の共有などが受けられるように支援をしています。
また、JETRO(日本貿易振興機構)、東京都や愛知県、横浜市などの地方自治体から我々が依頼を受けて、ベンチャー企業に対してメンタリングから中国の投資家へのご紹介、ピッチの指導なども行っています。
もう1割は、最近特に増えてきている中国のベンチャー企業向けの事業です。中国市場はスピードが早くて、AIやメタバースといった特定領域の事業が大きく広がりそうになると、競合が多く出てきて、すぐにレッドオーシャンになってしまうんです。
ただ、そんなレッドオーシャンのなかで生き残った会社は、技術的に非常に高いものを持っています。
その技術をもって日本市場で事業を展開したいという企業の日本市場進出を支援しています。
その後、本格的に日本市場へ進出・展開をしていきたいという中国企業に対しては、日本で我々と一緒にチームをつくり、日本の顧客開拓などをやっていきます。
(この事業は)中国ベンチャー企業のニーズの変化に応じて提供するようになりました。2023年にスタートして、2024年以降も力を入れていきたいと考えている事業です。