公的助成には公平性も必要

 ただ、東京都による所得制限撤廃は、あくまで都内在住の生徒を対象にしている。東京都内の私立中学には周辺の県からも多くの生徒が通っているが、住む場所が違うだけで公的助成が受けられない事態となる。大阪府が2024年からの段階的な導入を目指している、府内の全高校生の授業料無償化にも同じ問題点がある。北氏は公的助成について次のように指摘する。

「これまでは公立学校のほうが実質的には補助されてきたわけですから、私立学校に通う生徒への公的助成が高まることはいいことだと思います。しかし、特定の地域に住んでいる生徒だけが対象になることには不公平感もあります。住宅費などは確かに違うものの、教育に関する制度ですので、全ての生徒に公平であってほしいです」

 経済協力開発機構(OECD)が2022年10月に発表した、国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合では、日本は2.8%と加盟37カ国中36位の低水準だった。この状況を踏まえても、公的助成は全国の全ての生徒が同じように受けられる仕組みが望ましいのではないだろうか。北氏は中学受験の志願者数が増加している中、「私立学校の教育を誰もが選択しやすい環境になれば」と話している。

(文=田中圭太郎/ジャーナリスト、協力=北一成/首都圏模試センター・取締役教育研究所長)

提供元・Business Journal

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