制作段階で「?」と思ったら

ーーー担当案件のなかで表現に違和感があった場合、どこまでを許容すべきか悩むことはありますか?

毎日そればかりで……。お客様に気持ちよく商品を手に取っていただきたいし、ワクワクすることを提供したいと思っているので、その人たちの尊厳を傷つけるようなことはしたくないですね。そういう意味でも私は違和感のある表現があれば、変わる可能性が限りなく低くても、(そのことを)伝えるようにしています。

そのときに違和感に気づいた人がいるという証拠を残さないと、炎上したときに誰も止められなかったのかという話になってしまうので、気づくタイミングで言うべきなのかなと。

仮に却下されたとしても、もしかしたらいつか変わるかもしれないという希望を信じています。ただ、私が言うより世の中の人に言われた方が耳は傾けてくれると思うので、消費者の方もためらうことなく違和感を伝えてほしいです。

ーーーSNS上で声を上げ続けている笛美さんの活動にも通ずることがありそうですね。

賛否両論あるかもしれませんが、私が発信しているSNS上でのメインターゲットは働く20〜30代の女性なんですよ。その理由は、人生のなかで1番仕事、恋愛、結婚、出産などについて期待されるし、1番それを押し付けられて苦しむ時代でもあるから。

なので、その人たちが自分を責めてしまわないように何かしたいと思っていて、私みたいに会社で働く女性に向けて発信しています。私ができることは、私に似た境遇の人たちを救うことなのかなと。

それでも広告業界にい続ける

ーーーさまざまな障壁を感じているなかで、それでも広告業界にい続ける理由はありますか?

広告業界では常にクライアントの課題と向き合い、関心のない人たちにも刺さるメッセージを伝えなければなりません。それを実現できるノウハウやマインドセットを持つ人たちがそろっているのは、広告業界のよいところかなと。この仕事が私のSNS上での活動にも生かされていると思います。

ーーー関心のない人に発信し続ける。その活動が社会に苦しめられている人を救うのだと思います。

現状の社会は男性優位ではあるものの、社会で特権をもつ層とされている男性が悪いわけではありません。

社会の構造のせいでこのような事態を招いてしまっていることを踏まえれば、この人も私たちと同じ構造の犠牲者なのだと思います。それに気づいてもらうためにも、声を上げ続けることは大切なのかなと。