毎日必ずといっていいほど目にする広告は、私たちに多くの情報を与え、無意識にも人々の価値観や消費行動を決定しています。そんな影響力のある広告は、どのような人たちが作っているのでしょうか。

フェミニストで広告業界で働く会社員の笛美さんは、多くの広告関連企業がいまだに男性優位社会であることを指摘。前編では、自身の就活時や実際に入社して感じた広告業界での「モヤモヤ」を明らかにしました。

今回はさらに業界の実態を深掘りし、現代における広告について話してもらいます。

広告の多様化は進んでいる?

ーーー前編では、広告業界を「男社会」と表現していました。広告業界の男女比はどのくらいですか?

大手広告代理店の電通、博報堂、サイバーエージェントなど、大体どこも男女比は7:3となっています。女性の従業員はいるものの、上層部にいくにしたがって女性の割合は少なくなる傾向にあり、電通の女性管理職は10%(2021年12月末)、博報堂の女性の管理職は9.6%(2022年度3月時点)、サイバーエージェントは22.3%です(2022年度時点)。

出典:博報堂DYホールディングス「ESGデータ集|アステナビリティ」、電通グループ統合レポート 2022、株式会社サイバーエージェント「従業員数データ」

ーーーとはいえ、多様性がさけばれる昨今、時代の流れに合わせて広告表現も変わることも?

先ほど挙げた電通や博報堂のような大きな広告代理店では、SDGsプロジェクトを行っていたり、NEWPEACEという会社は社会課題に向き合ったクリエイティブを展開したり、最近の動きは変わりつつあります。とはいえ、みんなが意識しているかといえば、全然そんなことはなくて。

残念ながら日本の広告業界では、ポリコレ(特定のグループに対して不快感や不利益を与えないよう、差別的な表現を正すこと)は人気がないから……といって社会課題から目をそむけるような人たちも多くいます。

ーーー世の中に出る広告は、中の人(制作側)によって大きく左右されると。

そうですね。なかには新しい風を吹き込むことやSDGsの取り組みに抵抗感を抱く人もいるので、そういった価値観の人たちがクライアント側や代理店側に多いと難しいかもしれません。

たとえ私のようにやりたいという人が1人いたとしても、1人で10人のチームを説得しなければならないので、実現するまでには時間がかかりそうです。