アップルが旧世代のiPhone端末の性能を意図的に落としていた「バッテリーゲート問題」で、和解金の請求を受けた個人ユーザに対して一人当たり92.17ドル(日本円で約1万3400円)の支払いを始めたことがわかった。米国メディア「MacRumors」が報じた。OSを「iOS 11」にアップデートすると端末の性能が落ちるように設定されていたこの問題。なぜアップルはこのような対応を行っていたのか、またユーザはどのようなデメリット、もしくはメリットを受けるか。専門家の見解も交え追ってみたい。
問題が表面化したのは2017年のことだった。iPhone 6sのOSをiOS11へアップデートすると性能が落ちて反応が悪くなるという報告が相次ぎ、バッテリーを交換すると性能が回復するとの指摘が続出。これを受けアップルは、iPhone 6、iPhone 6 Plus、iPhone 6s、iPhone 6s Plus、iPhone SEについて、バッテリーの劣化に伴う瞬間的な消費電力上昇やCPU負荷増大によるシャットダウン発生を防ぐために、iOSアップデート時に端末のピーク性能を制限するよう設定していたことを公表した。ITジャーナリストの山口健太氏はいう。
「米国で集団訴訟の対象となったiPhoneの機種について、アップルはピーク性能を管理することで突然のシャットダウンを防ぐ設定を組み込んでいたと説明しています。スマホの電源管理機能ではバッテリーの状態や本体の発熱に応じて性能を抑える場合がありますが、アップルはバッテリーの経年劣化対策と位置付けています。ピーク性能が抑えられると、アプリの起動に時間がかかるなどの影響が出てきます。スマホの性能を測定するベンチマークテストのようなアプリでは如実にスコアが下がっていたようです」
ユーザにとってのメリット
アップルは性能の制限についてバッテリー寿命を延ばす効果もあると説明。ユーザにとってメリットがある旨を強調した。
「iPhoneが突然シャットダウンすると大事な電話が切れたりデータが失われたりする恐れがあるため、必要に応じて性能を落とすこと自体はやむを得ない措置といえます。しかしそうした機能についてユーザへの説明が不足していた感は否めません。17年当時は当該機種が発売されてから1〜2年しか経っておらず、新モデルへの買い替えを促しているのではないかといった疑念の声もありました。問題となった電源管理機能は18年3月のiOS 11.3で改善され、現在はiOSの設定画面にあるバッテリーの項目から、ピーク性能が出ているかどうか簡単に確認できるようになっています」(山口氏)
また、大手キャリア関係者はいう。
「ユーザから多くの疑問があがるまで、そのような設定を行っている事実を公表していなかった点は批判を浴びた。バッテリーを交換すれば性能が改善されると知らずにiPhoneを買い替えたユーザも一定数存在していただろうから、批判は免れない」
アップルは顧客対応策として、アップルは18年1~12月の期間、バッテリー交換が必要なユーザにバッテリープログラムを通常料金の約6割引き、29ドルで提供することを発表。アメリカではアップルに対する集団訴訟が起こされ、20年にアップルがユーザに対し総額5億ドル(日本円で約720億円)の和解金を支払うことに合意し、このたびユーザへの和解金支払いが開始されたことが明らかになったのだ」