エサは惜しまず3種類を用意
エサは食いが立っている時は青イソメだけで十分だが、釣れる可能性を高めたい一心で、私はエサ代を惜しまずマムシ、青コガネ、青イソメの3種類を用意した。
虫エサは海水バケツに入れて活きの良い状態を保たせておき、使う分だけエサ箱に取り分ける。2本針仕掛けのエダスの針のほうには青コガネか青イソメを、下の針のほうにはマムシを針のチモトの上までたくし上げ、その下に青イソメを刺す「青マムシ」という使い分けをした。
カレイの時合いは短いので、活きの悪いエサのまま海中で放置していては、わずかなチャンスを自ら逃してしまう。3本の竿・計6本の針にこのようなエサの使い分け・刺し換えをするのは手間がかかるが、私はエサ代だけでなく手間も惜しまず、一攫千金のカレイを狙う。
旧一文字で投げ釣りは一人ぼっち
岸和田一文字は、沖一文字と旧一文字の2本の防波堤の総称。2本の防波堤は目に見える距離にあるが、私が渡った旧一文字は、大半の釣り人が渡って賑わう沖一文字とは正反対で釣り人は全員でたったの3人。
北端の赤灯台の1人は独自路線の釣り、私ともう一人がカレイの投げ釣りをしていたが、この日までに旧一文字でカレイは釣れておらず、当日もカレイの気配は全くない。
3番の船着き場から少し4番寄りの方向に移動して釣り座を構え、7:00前から沖向きに投げ釣りを開始。波止際から沖向きに70m先、50先m、30先mぐらいに遠近を投げ分けていたが、近投はフグと思われるエサ取りの猛攻にハリス切れの連続で打ち切り。
3本の竿は全て遠投から手前に少しずつ引いていく釣り方に変更する。ところが事態はさらに暗転。もう一人いた投げ釣りの人が見切りをつけて、7:30の便で旧一文字から去ってしまい、ついに投げ釣りは私一人ぼっちになってしまった。
9時前に釣れた20cmのキスが後の布石に
何とか打開策をと思い、釣り座を4番寄りに少しずつスライドしていく作戦に打って出た。孤軍奮闘が功を奏しての1匹にようやく巡り会えたのは9時前。巻き上げる時にわずかな重みを感じたその正体はキス。サイズは20cmの良型だった。
キスはスカリに入れて投げ釣りを再開。遠投から手前に引いていく際に、海底の起伏が大きそうな所を竿先からの感触で捉えて、そこに少し留め置くことで、魚に出会える可能性が高まるのは過去の経験で立証済。キスを仕留めたことで、今回もその釣り方が正しかったことを確信した。
カレイの時合いはせいぜい8時過ぎまでなので、時既に遅しの感はあったが、実はこのキスが釣れた時の体感は、後の布石となったのだ。