きちんと利益を確保する戦略
飲食店の値下げには、いろいろな思惑や戦略があるものです。40%値下げのように思い切ったキャンペーンを打つことによって、マスコミやSNSで話題になり広告効果を発揮します。今回のKFCの値下げは、全商品が40%オフというわけではありません。オリジナルチキン3個とカーネルクリスピー2個のセットが単品積み上げ価格1510円のところ、40%値下げで890円となっています。たしかにお得なのは間違いありませんが、見方を変えれば「オリジナルチキンを3つ買ってくれた人にはクリスピーを2つおまけ」みたいなものともいえます。バーガーキングのキャンペーンも、デリバリーピザを店頭受け取りにすると「もう1枚サービス」になるかたちと似ています。
店側とすれば、このような値引きキャンペーンを呼び水に来店客を増やし、他の商品の注文や追加注文も期待できます。特にファストフード店の場合、原価率の低いドリンクやサイドメニューが売れると儲かります。普段からセットにして割引きをしているのは、そのほうが単価も上がり利益が出るからです。
以前、「この料理は原価率100%」といったPRをするお店が流行ったことがありましたが、他の料理やお通しやドリンクなど、その他の商品の売上も考慮してトータルで利益を確保する戦略です。飲食店の飲み放題も単品の金額の積み上げよりもお得感がありますが、一定以上の単価を確保してちゃんと利益を確保する戦略となっています。
このように「安く見せる」ことが大事で、それにより来店したお客に他の商品も買わせたり、一定の客単価を確保したりし、薄利多売で結果として利益を確保することを飲食店は意識して値引きキャンペーンを組み立てます。お客が来なければ売上も利益も上がりませんが、キャンペーン商品の購入だけでも多少なりとも利益は残ります。特にテイクアウト商品を扱う業態はなおさらです。イートインについては利益が少ないお客だけで店内を埋め尽くされ、単価の高いお客を逃がしてしまうと、キャンペーンをしないほうがよかったということもありますが、テイクアウトについては売れたら売れた分だけ利益が積みあがっていきます。
今回、KFCとバーガーキングがあえて大幅値下げに踏み切ったのは、年が明けて少したち消費活動が落ち着く時期ですので、何かキャンペーンを打たなくてはと思ったのでしょう。消費者はキャンペーンや話題性のあるものに反応します。裏を返せば、キャンペーンを展開する店にお客を取られてしまうと同業他社の売上は落ちるので、率先してキャンペーンを打たなければなりません。飲食店は「今だけ食べられる魅力的な商品」をPRできればいいのですが、チェーン店の場合はオペレーションやコスト的に、そう簡単にはいかないので、値下げキャンペーンになりがちです。
値下げキャンペーンを乱発すると通常料金で売れなくなるリスクもあるので注意が必要ですが、値下げはお客にダイレクトに響くものでもあります。私のコンサル業の経験としては、街場の個人店には安易な値下げキャンペーンはお勧めしませんが、日常使いのチェーン店でしたら値下げキャンペーンも選択肢の1つだと思います。デメリットよりもメリットのほうが大きいと判断した時や、損益的に許容範囲に収まると判断した時には行ってよいですが、それが正しかったのかどうかは、そのときのお客の行動次第といえるでしょう。キャンペーンによってお客が増える場合も増えない場合もありますが、絶えず「次の機会」を提案していくことが大事です。
(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)
提供元・Business Journal
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