【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=アバルト500eツーリスモ・ハッチバック/価格:615万円。ラインアップは固定ルーフのハッチバックと、オープントップのカブリオレ(645万円)の2グレード。駆動方式は2WD、『CAR and DRIVER』より引用)

BEVが静か、という固定概念を覆す楽しい1台

アバルトとして初のBEV、アバルト500eが上陸した。500eの特徴は、すべてに「アバルトらしさ」を徹底した点にある。俊敏なドライビングパフォーマンスはもとより、アバルトならではのサウンドを再現したサウンドジェネレーターを採用。内外装には、アバルトとしても初めてという、サソリを模したデザインを随所に施した。

小さいながらも存在感たっぷりのエクステリアは、まるで「チコちゃん」の目のようなLEDヘッドライトや、「ゴン太くん」のようなしもぶくれフォルムが印象的だ。
両サイドのリアフェンダーにはスコーピオン・エンブレムを装着。稲妻の放電をイメージさせる意匠でBEVであることをアピールする。ステアリングホイールはサソリの爪を、独特の形状のホワイトのリップスポイラーはサソリの足をそれぞれ模したものだという。

インテリアはブラック基調。各部にブルーやイエローのアクセントを入れてスポーティさを高めている。優れたデザインセンスは、さすがイタリアンである。

【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

走りの話をする前に、まずサウンドジェネレーターについて説明しておこう。これはアバルトを象徴する伝統のハイパフォーマンスエキゾーストである「レコードモンツァ」のエグゾーストサウンドを忠実に再現した独自のサウンドシステムである。

プロジェクトチームが延べ6000時間以上をかけて完成したというサウンドは、なかなか印象深い。ディスプレイの設定画面に「外部音」と表示されるとおり、ガソリン車ならマフラーエンドの位置に装着されたスピーカーから車外に向けてサウンドを発する。外にいる人に対して聞かせている音が、車内でも響くという演出だ。一般的なアウティブサウンドコントロールは、車内用で車外は静かなまま。対してアバルトは、外に向かって刺激的なサウンドを発する。BEVは静かという既成概念をあえて覆す機構だ。そこが面白い。

【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

サウンドを出すかどうかは停車時に限りディスプレイ上で任意に選択できるようになっている。ONにすると起動時のユニークな演出に始まり、走行可能状態ではつねに基本となるサウンドが響き、アクセルを踏むとそれに合わせて表現豊かなサウンドがプラスされる。

車速が上がるにつれて高まる音色は、たしかにアバルトらしく刺激的。ガソリン車の695あたりを思い起こさせながらも、ときにバイクのようでもあり、ときにV8の排気干渉のような複雑な響きも奏でる。いろいろな要素のある絶妙なサウンドを楽しませてくれる。真剣な「遊び心」を感じた。オフにするとたちまちBEVらしく静粛に変身。本来はこうなのかと驚くほど静かになる。これには少々戸惑ってしまった。サウンドに慣れると、やけに物足りなく感じたほどだ。

加速は伸びやか。人気者になる資格十分のミニギャングだ!

アバルト500eは、加速フィール自体にも味わいがある。まるで高性能な内燃エンジンのような雰囲気。アクセルを踏み込むと過給されてトルクがわき上がるような盛り上がり感を感じる。低速よりも中~高速域での伸びを重視した味付けで、ガソリン車の695を彷彿とさせるフィーリングになっている。

BEVらしく瞬発力が実感できるのだが、パフォーマンスを売りとするBEVでは一般的な初期でガツンとくる設定には、あえてしていない。ゆえに意外なほど乗りやすい。

【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

だがマイルドかといえばそうではない。強めにアクセルを踏み込むと発進時に前輪が空転するしトルクステアも出る。このあたりはアバルトらしくあえて確信犯的なセッティングとしたに違いない。ただし、ヤンチャな中にも秩序を感じさせる。BEVスポーツとして、ちょうどよいチューニングに思えた。

クイックなハンドリングとスタビリティの両立も見事だった。BEVの強みで、ガソリン車に対して重心が低くなり、前後重量配分は57対43と大幅に改善。トレッドは60mmも拡大された。操縦性は実にコントローラブル。乗れば誰しも高い完成度を直感できるはずだ。乗り心地もよかった。足回りはそれなりに強化されているが、意外なほど硬さを感じない。

アバルトのガソリン車は、抜群の楽しさを誇るものの、乗り手を選ぶ傾向があった。ところが500eは落ち着いている部分がしっかりとあって、誰もが刺激的な走りを存分に味わえる。そこが新しい。

【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【最新モデル試乗】アバルト初のBEV、500eは刺激的な演出満載。なによりエンジン車以上に魅力的なサウンドが素晴らしい!
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

先進運転支援装備は、衝突被害軽減ブレーキやレーンキーピングアシスト、ブラインドスポットモニターなどを搭載。クルーズコントロールがACCでない点が惜しい。早期のリファインを期待する。

アバルト500eは、見て、乗って、テンションが爆上がりする1台だった。乗るほどに、アバルトとしてBEVを出すからにはこうでなくちゃね、と顔がほころんだ。印象的なサウンドジェネレーターのサウンドを、街中で耳にする機会が頻繁にありそうだ。