大きな誤解「低賃金だから若者が転職する」
より大きな問題は、労働者の偏在と働き方の改善だと高木氏は続ける。
「若手の新卒入職者が増えているのに人手不足なのは、人材が都市部、大手の企業に転職してしまうからです。その流れを食い止めるには、地方の企業が働きやすさの改善、および地域における好待遇の実現につとめ、それを広く発信していく必要があります。国交省が若手人材の離職理由を調査したところ、移動負担や休みの取りにくさが上位に並び、賃金は4位でした」
実は、30人以上を雇用する建設事業者の就業者の労働時間は減少しつつある。それでもまだ他の産業より長く、勤務時間にカウントされない事業所・現場間の長時間移動もある。労働時間・拘束時間の長さは否めないので、ここはまだまだ改善が必要だと高木氏は力を込める。地域格差と長時間労働を是正し、建設業全体のイメージアップを図ることが、2024年問題解決の糸口といえそうだ。
「イメージの部分で、建設業についての最大の誤解は『低賃金だから若者が辞める』です。実際のところ、一人親方以外の建設業就業者はサービス業など、他の業種に比べても給与水準は高い。離職理由は給与以外にある。このことが知られればもっと人材を集められるはずです」
建設業が低賃金と誤解される理由は2つ。1つは一人親方の存在で、ある論文では、一人親方の3分の1は生活保護レベルの収入だという。そしてもう1つが、すでに述べてきた業界特有の非効率さで、「給与は高いが大変で、割に合っていない」のだ。
「建設業は年功序列要素が薄く、若いうちから腕と資格があれば稼げるので、他の職業よりも男性就業者の結婚が早く、既婚者が多く、子どもも多いという厚労省統計があります。災害時には率先して復旧に従事し、活躍します。その意味では職人には夢があります。AIの台頭で事務職の価値が下がっています。実際に地方公務員、地方銀行員の年収は低下傾向にあります」
かつては3K、ブルーカラーという聞こえの良くない表現もあったが、現実に年収1000万円のブルーカラーがゴロゴロいるのが建設業。仮に地方なら、ホワイトカラーだと人気の公務員と比べて、建設業が魅力のない職場だとは決していえないだろう。