タイ代表の問題点とは
[4-2-3-1]の基本布陣でこの試合に臨んだタイ代表は、キックオフ直後からGKパティワット・カマイや最終ラインから丁寧にパスを繋ごうとする。この際のタイ代表の選手たちの立ち位置には、大きな問題点があった。
タイ代表はGKや最終ラインからパスを回す際、スパナン・ブリーラットとニコラス・ミケルソンの両DF(両サイドバック)が自陣後方のタッチライン際、且つ相手サイドハーフの手前に立ってしまう場面がちらほら。サイドバックがこの位置でボールを受けた場合、自身の傍にはタッチラインがあるため、左右どちらかのパスコースが必然的に消える。そのうえ、サイドバック自身も相手サイドハーフの寄せ(プレッシング)をもろに浴びるほか、サイドバックから味方サイドハーフへの縦のパスコースも、相手のサイドハーフやサイドバックに塞がれやすい。
これらの理由から、GKや最終ラインからのパス回しの際に、サイドバックは自陣後方のタッチライン際且つ相手サイドハーフの手前に立たないほうが望ましいのだが、タイ代表のサイドバックの立ち位置は、前述の通り悪かった。
詰めが甘かった日本代表の守備
タイ代表のサイドバック方面へパスを誘導し、タッチライン際でボールを受けるサイドバックやその周辺の相手選手を捕捉すれば日本代表はより多くのチャンスを作れたはずだが、特に前半はこの守備の段取りが徹底されておらず。ゆえにタイ代表にプレッシングを掻い潜られる場面があった。
この最たる例が、前半10分のタイ代表の攻撃シーン。この場面ではタイ代表の右サイドバック、スパナン・ブリーラットが自陣後方のタッチライン際でボールを受け、ここに基本布陣[4-2-3-1]の日本代表MF奥抜侃志(左サイドハーフ)が寄せたが、スパナンの左隣に立っていたMFウィーラテップ・ポンパーン(ボランチ)を捕捉する日本代表の選手がおらず。このためスパナンとウィーラテップによるパス交換を許し、タイ代表にボールを運ばれてしまった。スパナンのラストパスが繋がらなかったため日本代表は事なきを得たものの、相手のパス回しを片方のサイドへ追い込んだ後のプレッシングは、今後も磨き上げる必要があるだろう。
「もっと良いスイッチと良い追い込み方を」
日本代表の森保監督は「言わば急造のチームで、(チームが)スムーズに機能するのは難しいと思っていた」と、試合後会見の冒頭で率直な思いを明かしている。そのうえで、同代表の守備に関する記者の質問に答えた。
ー日本代表の前半の守備についてお伺いします。これは私(記者)の感想ですが、もう少し高い位置(敵陣の深いところ)、日本代表にとって理想的な場所でボールを奪えそうなシーンがあったように見えました。先ほど「言わば急造チームで、機能性を高めるのが難しかった」と仰っていましたが、それを踏まえて、森保監督は今日の前半の守備にある程度納得されているのか。それとも、もう少し出来た部分があったのか。この点について率直なご感想をお伺いしたいです。
「(納得できた部分とそうでない部分の)両方ありますね。より高い位置でボールを奪おうと、選手たちは何度かトライしながらも、(プレッシングを)外される部分がありました。机上で考えるのは簡単ですけれども、相手も巧いですし、そんな簡単にいくものではないと思って観ていました」
「もっと良いスイッチ(攻守の切り替え)と良い追い込み方をすれば、ボールを奪えた場面は何個かあったかなと。それは仰る通りだと思いますので、そこは更に(レベルを)上げていけるようにしたいです」
「(最前線、中盤、最終ラインの3列が)間延びして、スペースを与えて、これによって相手の攻撃回数が増えて我々のペースが乱れる。(高い位置で)ボールを奪えないまでもこうしたシーンが無かったのは、選手たちが我慢強さを持ち合わせて、修正に繋げてくれたからだと思います。そこは評価したいです」
「より高い位置でボールを奪うというのは、相手を見ながらトライしていきたいと思います。でも(今月開幕の)アジアカップで勝っていこうとしたとき、世界のトップ・オブ・トップの相手に勝とうとしたときは、より我慢強く守備をしながら、ボールを奪いに行くことを磨いていかなければならない。今日の試合を観ていて、そう思いました」