毎年クリスマスシーズンになると小売店の食品売り場やファストフード店では数多くのチキン商品が用意され、客が買い求める光景が見られるが、日本でクリスマスにチキン料理を食べる習慣が広まったのは、ファストフードチェーン「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」による「嘘」が発端だったという説が一部で話題を呼んでいる。果たしてこれは事実なのか、追ってみたい。

 今年もクリスマスシーズンとなり、スーパーや百貨店、コンビニエンスストアでは多くのチキン料理が売られている。なかでもコンビニチェーン各社は熱いチキン商戦を展開。セブン-イレブンは「炭火焼きローストチキンレッグ」を投入し、店頭での予約販売をPR。「ななチキ」「揚げ鶏」などチキン惣菜を組み合わせ自由で2個買うと50円引き、4個買うと100円引きになるというキャンペーンを実施中だ。ファミリーマートは人気グループ・TWICEを起用した「クリスマス ファミマのチキンでしょ!」と謳うテレビCMを展開し、数量限定で「ファミマプレミアムチキン(骨付き)」や「直火焼ローストチキンレッグ(骨付き)」を販売。屋外に専用販売コーナーを設けている店舗もみられる。ローソンは「黄金チキンBOX 20個入」や「クリスマスバラエティBOX」を特別販売している。

 ファストフードチェーン各社も積極的にチキンキャンペーンを展開。モスバーガーは「モスチキンパック」のクリスマス特別予約注文(12月10日までで終了)を受け付け。吉野家はクリスマスの期間限定商品として「から揚げツリー パーティーキット」を販売。フレッシュネスバーガーは4種類から選べる「スペシャルチキンボックス」を販売している。なかでもフライドチキンを主力メニューとするKFCは例年クリスマスシーズンには店舗に長蛇の列ができる光景が風物詩にもなっているが、今年も多彩な「パーティバーレル」や「クリスマスパック」などの各種メニューに加え、数量限定で「五穀味鶏 プレミアムローストチキン」「五穀味鶏 プレミアムローストチキン」なども取り揃えている。

「クリスマスにはケンタッキー」が始まったきかっけ

 そんなチキン商戦が繰り広げられている日本。かつてはクリスマスにチキンを食べる習慣はなかったが、KFCがついた「嘘」がきっかけで現在の風習が根付いたという情報が広まっているのだ。日本でKFCの1号店がオープンしたのは今から53年前の1970年11月、場所は愛知県名古屋市。2018年12月22日付「BUSINESS INSIDER」記事によれば、当時の店長・大河原毅氏がNHKの番組に出演した際、西洋にはクリスマスにフライドチキンを食べる習慣があるのかという質問に対し、「『はい』と答えました。嘘をついたのです」と発言。その後、KFCは毎年クリスマスキャンペーンを全国展開するようになったという。

 ちなみにアメリカやイギリスなどでクリスマスに習慣的に食べられているのは七面鳥(ターキー)であり、世界的に見るとクリスマスにチキンを食べるという日本の習慣は珍しいとされている。

 のちに日本ケンタッキー・フライド・チキン(現日本KFCホールディングス<HD>)社長に就任することになる大河原氏の発言だけに、意図的に嘘をついた背景が気になるところだが、日本KFCHDは16年12月24日付当サイト記事で次のように語っている。

「店舗近くのミッション系の幼稚園から、『フライドチキンを買ってパーティをしたい。サンタクロースに扮装してクリスマス会に来てもらえませんか?』とのご相談を受けました。そこで、サンタクロースに扮した店長が会場に入り、『メリークリスマス!』の掛け声と慣れない踊りを披露すると、場が盛り上がり、子供たちは大喜び。次第にいろいろな学校からご注文が入るようになりました。これにヒントを得た営業担当者が『クリスマスにはケンタッキー』を広くアピールしようと考えたことがはじまりです」

 KFC初のクリスマスキャンペーンは1974年12月1日に開始。以降、KFCは「クリスマスにはケンタッキー」というメッセージをテレビCMなどで流し、毎年全店でクリスマスキャンペーンを実施している。

「また、1985年には『パーティバーレル』を発売いたしました。最上段にオリジナルチキン、中段にケーキ・アイス、下段にサラダという、これさえあれば、手軽にパーティができるといった組み合わせで、大ヒットとなりました」(同)

 ちなみに古いデータだが、KFCの2015年のクリスマス期間(12月23~25日)の総売上は54億9000万円となっている。