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日本車黄金時代を終わらせたWRカーに抗う、究極のグループA
市販車ベースでのWRC制覇にこだわった三菱
日本車黄金時代を終わらせたWRカーに抗う、究極のグループA
2023年現在に至るまで2リッター4WDターボ車では圧倒的な人気を誇り、MOBY編集部がAIに聞いた、「30~40代のクルマ好きが気になる名車」にも当然のごとくノミネートされている、三菱の「ランエボ」ことランサーエボリューションシリーズ。
1996年登場の第2世代第1弾「エボIV」まではベース車と同じ5ナンバーボディを堅持してきましたが、1997年からグループAの特認車両「WRカー」登場によって相対的に戦闘力が低下していきます。
特にタイヤやブレーキの負担が大きいターマック(舗装路)競技でWRカーに対抗すべく、純粋な市販車ベースの意地を見せて作られたのが究極のグループAマシン、エボVでした。
市販車ベースでのWRC制覇にこだわった三菱
「ギャラン」の車格アップと大型化により、急遽WRC向け主力マシンとして担ぎ上げられた三菱の小型大衆車「ランサー」ですが、その経緯と改造範囲の少ないグループAでの参戦という事情から、4代目ベースのランサーエボリューションIIIまではいわば急造。
5代目ベースの第2世代ランエボからは、最初からエボリューション化を前提とした設計が行われ、1997年からWRCに参戦した第1弾「エボIV」は前年のエボIIIに引き続き、エースドライバーのトミ・マキネンがドライバーズタイトルを獲得します。
しかしその1997年はWRCにとってグループB廃止以来となる転機になった年で、グループAマシンの特認制度となる「WRカー」が誕生しました。
従来からのグループAでは、「ベース車は連続する12ヶ月間に2,500台以上の生産を義務」としていましたが、WRCで通用するような小型ハイパワー4WDターボを大衆向け価格で販売していた国など、当時は日本メーカーかフォードくらい。
そこでWRCトップカテゴリーへの門戸を広げるべく、「年間生産25,000台のうち、2500台生産した派生車種がベースなら駆動方式もターボ追加も自由」、つまりFF小型大衆車を4WDターボへ仕立てた競技専用車で参戦可能にしたのが「WRカー」です。
それで1997年にはスバル インプレッサやフォード エスコートがグループAからWRカーへ転換したほか、シーズン後半にはトヨタがカローラWRC、1998年にはスペインのVW系メーカー、セアトもコルドバWRCを投入するなど、WRカー時代が到来します。
これで市販4WDターボ天国だった日本車の黄金時代は終わりますが、「市販車ベースでWRCに勝利する」をテーマにしていた三菱は、唯一「究極のグループAマシン」へ舵を切りました。
すなわち、「ベース車そのものをWRカーばりにして市販」というわけで、ワイドボディ版「ランサーエボリューションV」は、ベースの5代目ランサーとはまるで別物となったのです。