一方、現在のところ、タイ政府のエンジン車に対する補助は特になく、日本メーカーは不利な状況下で販売競争を続けていくしかないのである。
日本車が負けるのを見たくない日本人タイに住んでいると思うのだが、トヨタなどがEVに積極的でないこともあり、日本ではEVはあまり売れてない。それもあって、日本のマスコミやYou TubeなどはこぞってEVはバッテリーに問題があるとか、すぐ壊れる、寒さの中で動かなくなるなどと弱点ばかり強調し、はたまた中国で大量のEVが放棄されているEVの墓場を放映したりして、EVはそのうち行き詰まるに違いないと勝ち誇ったようにいう。
こういうのを見ると、彼らは世界で本当に起こっていることに目を向けるのではなく、視聴回数を上げるために視聴者が喜ぶように都合のいいところだけを誇張して伝えているのではないかと、筆者などは疑ってしまうのである。
現実は今回のモーターショーの結果からもわかるように、少なくとも東南アジアにおいては、日本勢の負け戦は既に始まっているのである。
タイのアナリストや業界関係者の予測 中国の自動車メーカーは40年以上の努力がやっと実り、とうとう日本車を王座から引きずり下ろそうとしている。アナリストたちはその中でもBYDが最も有力であると指摘する。 これまでタイは日本ナンバー1のトヨタの製造拠点であったが、新規参入してきた中国のBYDやチャンガン自動車等も東南アジアの製造拠点としてタイに工場を建設しつつあり、今後タイは日本勢対中国勢の戦場と化す。 そして、多くのアナリストやメディアの一致した意見は、今のトレンドはこれからも続き、近い将来、日本勢が破れ中国メーカーが日本メーカーに取って代わる。これらが、現地の新聞等に載っている中国車と日本車に対する予想であるが、少なくとも東南アジアのデトロイトと呼ばれる自動車生産の中心地であるタイが、日本のエンジン車にはもう未来はないと判断しているわけだ。
EVは最初に出遅れたらもう勝てない日本メーカーも中国メーカーにただやられるだけでなく、当然各社にもこれからの世界戦略があるとは思うが、一方でタイの一部のアナリストたちが今の日本メーカーについて以下のように指摘していることも触れておきたい。
大半の日本メーカーは、中国メーカーとの戦争はまだ始まったばかりであり、これから長い時間がかかるゲームであることから、市場がエンジン車からEVに徐々に移行していく間に自分たちも時間と資金をかけてこれまでのエンジン車からEVへシフトしていけるのではないかと希望的に考えている。 しかし、何人かのアナリストは日本メーカーは時間を浪費しているだけであり、EVという新たな市場ではこの初期段階でのスタートが非常に重要だと考えている。 スマートフォン業界を見てもわかるように、アップル、サムスン、ファーウェイの3社が世界市場で君臨しているが、後発メーカーでこの一角に食い込めたところがないのと同じなのである。こんな状況下、くしくもセター首相は今月16日に訪日し日本車メーカー首脳陣だけでなく岸田首相とも面談する予定だが、既にセター首相はタイはEVにシフトするものの、しばらくはエンジン車も見捨てないということを表明しているので、そこで何らかの条件提示があるはずだ。
正直なところ、就任して間もないセター首相の方が岸田首相より1枚も2枚も上手という感があるが、岸田首相にはタイがアセアンの自動車産業の中心地なれたのは、トヨタを筆頭に早くからタイで現地生産を始めた日本車メーカーの功績であると念押しした上で、少しでも現地日系企業への優遇措置を取り付けてもらいたものである。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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