飽食の時代の中にあって一部では“断食”に注目が集まっているが、適切に栄養は補給しながらも減量を目指すにはどうすればよいのか。そこで提案されているのが、なんとブタの摂食行動に学ぶ“ブタ野郎ダイエット”である――。

■ブタは肥満体ではなかった

 英語においても“ブタ”はやや嘲りのニュアンスを含めて使われることがあり、その場合は、ピッグ(pig)よりもオインカー(oinker)という俗語がよく用いられる。オインカーを侮蔑的に訳すとすれば“ブタ野郎”という感じになるだろうか。

 しかしブタの栄養を専門とする農業科学者のテオ・ファン・ケンペン氏とルールド・ジルストラ氏は「ブタはこのような不名誉な評判を受けるに値せず、むしろ健康的な体重維持に関して彼らから何かを学ぶことができるのは私たち人間のほうなのです」と新たな論文の中で言及している。

 ケンペン氏らが今年3月に「Metabolites」で発表した研究論文では、ブタはさまざまな点で人間に非常に似ており、人間のダイエット法を研究するための優れたモデル動物であることが指摘されている。

 ブタにたとえられた人物の多くは太っていることが多いと思われるが、意外なことに実はブタ自身は肥満の状態ではないということだ。

痩せたければ豚のように食え! ブタの摂食行動に学ぶダイエット法(最新研究)
(画像=画像は「Pixabay」より,『TOCANA』より 引用)

 たとえば実験でブタを“食べ放題”の環境に置いたとしてもブタは暴飲暴食をすることはなく、1日の中で数回に分けて少量の食物を食べるのである。主に早朝と午後遅くの時間帯に食べるということだ。

「ブタは代謝のニーズに最適なときに食べることができるほどに賢い。しかし人間はこの能力を失ったようです」と研究チームは言及する。

 この賢明なブタの自制心を直接ブタから教えてもらうことはできないが、彼らの行動や食事を研究して我々にも適用できる“ブタ野郎ダイエット(Oinker Diet)”を開発することができるだろう。

 生理学的にブタはさまざまな点で人間と共通している。どちらも雑食性で、食べ物の好みも似ており、驚くほど似た消化管を持っている。研究室でヒト用インスリンが合成される前は、ブタ由来のインスリンが人間の糖尿病の治療に使用されていたという経緯もある。科学者たちは遺伝子組み換えされたブタの臓器を人間に移植する研究さえ行っているのだ。

 さらに人間に対して行われるほとんどの栄養研究とは異なり、ブタに対して行われる研究は非常に厳密で、長期にわたる調査から得られた相関関係のみを示すことができる。人間を対象にした実験の場合は被験者の主観的な報告が考慮されるが、動物ではそれはないぶんデータの客観性がより高いのである。