貝類のむき身を生姜で煮込んだ佃煮、それが「しぐれ煮」です。 これら「しぐれ煮」は佃煮とはまた別物の料理とされています。 実際にその起源もそれぞれ違ってくるそうです。
今回はそれら「しぐれ煮」がどのような料理なのか解説します。 また、どのようにして生まれたものなのかも説明するので、ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。
目次
「しぐれ煮」とは

まずは「しぐれ煮」がどのような料理なのかを見てみましょう。
「しぐれ煮」はこんな料理
「しぐれ煮」とは貝類のむき身に生姜を加えて味付けした佃煮のことを言います。
つまりは佃煮の一種、それが「しぐれ煮」となるわけです。 これら「しぐれ煮」の多くははまぐりやあさりなどの貝類を使用して作られるのが特徴となっています。
ただ、牛肉や豚肉などの肉類から作られる例外もあります。 このように「しぐれ煮」は数ある煮物の中でも幅広い食材が使用される佃煮と言えるでしょう。
しぐれ煮の原型「時雨蛤」
近年は材料に関係なく生姜入りの佃煮全般を「しぐれ煮」と呼びます。
しかし、もともと「しぐれ煮」は「時雨蛤」を意味していました。 それら「時雨蛤」は近世に三重県桑名市の名物として広まったものだそうです。
事実、桑名市のはまぐりは肉厚で濃厚な味わいが特徴でした。 江戸時代には徳川家に献上されるほどだったとされています。
その「時雨蛤」が原型となって昨今のような「しぐれ煮」が生まれたとされています。
「しぐれ煮」という名前の由来は?

では「しぐれ煮」という名前はどこから来たのでしょうか? ここからはそれら「しぐれ煮」の成り立ちについてまとめます。
松尾芭蕉の弟子が付けたとする説
「しぐれ煮」という名前は松尾芭蕉の弟子が付けたとする説があります。
その松尾芭蕉の弟子というのが俳人として活躍した各務支考です。 各務支考は江戸時代中期に活躍した人物で、松尾芭蕉の高弟だったとされています。
そんな彼が「しぐれ煮」という名前を付けたのではないかと考えられているのだとか。
お茶漬けにして食べていたことから来たとする説
「しぐれ煮」はお茶漬けにして食べていたことから来ているとする説もあります。
そもそも「時雨」は晩秋から初冬にかけて降ったり止んだりする雨のことを言います。 昔はこの時期になると「たまり煮はまぐり」のお茶漬けが食べられていたのだとか。
事実、冷える時期はお茶漬けがより一層美味しく感じられます。 その後「たまり煮はまぐり」を「時雨蛤」と呼ぶようになったのではないかと考えられています。
そして最終的に「しぐれ煮」となったというわけです。
調理法や味わいから来たとする説
「しぐれ煮」は調理法や味わいから来たという話もあります。
かつて「しぐれ煮」ははまぐりのむき身をたまり醤油で煮て作られていました。 その様子を雨の「時雨」に例えたところから来たという話があるのです。
事実、江戸時代の料理本には「しぐれ煮」を短時間で仕上げる調理法が記されています。 それら短時間で仕上げる調理法がすぐに晴れる「時雨」に似ていることから「しぐれ煮」と名付けられたとされています。
その他、はまぐりの旬の時期が「時雨」でそこから来たとする説もあるとか。 さらに頬張った時に「時雨」のように無数の美味しさが駆け抜けるところから来たという説まであります。