シェア挽回に重要なマツダとの関係強化
現在、高い成長を実現するためにパナソニックは車載用バッテリー事業の強化に集中している。その一つとして、マツダがパナソニックをバッテリー調達先として選んだことは大きい。近年、日本企業においても、中国企業などからのバッテリー調達を検討する企業は増えているからだ。
2010年代、中国では共産党政権による土地の供与や産業補助金などを背景に、寧徳時代新能源科技(CATL)が急成長した。創業から6年後の2017年、CATLはパナソニックを抜き、世界トップに立った。韓国では、政府の支援もありLGエナジーソリューションが急速に大量生産体制を整備した。中国EVメーカーBYDも車載用バッテリー分野で成長した。2022年、世界の車載用バッテリー市場では、CATLがトップ、2位がLGエナジー、3位BYD、4位がパナソニックだった。5位のSKオン、6位サムスンSDIとパナソニックの差は縮小した(韓国、SNEリサーチによる)。
パナソニックがシェア挽回を目指すために、マツダとの中長期的な関係強化は朗報だ。それをきっかけに円筒形リチウムイオン電池需要が増えれば、パナソニックはバッテリー技術の優位性(安全性、航続距離の延長など)を世界に示すことができるだろう。一つの展開として、トヨタとの提携の強化が注目される。パナソニックはトヨタと合弁でプライム・プラネット・エナジー&ソリューションズを設立した。現在、同社は車載用角形バッテリーを生産している。円筒形バッテリーの有用性が示されれば、トヨタをはじめ内外企業はバッテリーの安定調達を狙い、パナソニックとの取引強化に動くだろう。
それを契機に、国内主要自動車メーカーのEVシフトも加速する可能性はある。日本企業のバッテリー、関連部材の研究開発や生産は強化され、関連する製造装置などの需要も増えるだろう。パナソニックとマツダの連携が波及効果をもたらす可能性は高い。そうした潜在的な成長機会をパナソニックはより重視している。5月18日に開催された、グループ全体の事業戦略から確認できる。重点投資領域に車載電池事業が定められた。電池技術開発を強化し、国際市場での競争優位性を高める方針も明確に示された。