人類は遠い昔から宇宙に強い憧れを抱いてきました。
そして20世紀に入り、人類は地球を飛び出して、月に着陸することに成功しました。
今では宇宙旅行も夢ではなくなっています。
しかし地球で暮らす私たちにとって、宇宙は快適な楽園ではありませんでした。
よく知られているように宇宙に滞在すると、微小重力のせいで足腰の筋肉や骨が弱くなります。
また重力が小さいせいで、頭痛や吐き気といった「宇宙酔い」も起こり得ますし、宇宙に散乱する放射線のために発がんのリスクも高まります。
他にも視力や血圧など様々な部位に影響を出ますが、その中で意外に知られていないのが「爪のケガ」です。
実は宇宙船のクルーが船外活動をすると、爪が剥がれてしまうことがよくあるというのです。
一体なぜでしょうか?
宇宙服のグローブはどんな仕組み?
宇宙空間はご存知のように、地球と違って大気が希薄なため、圧力がほとんどありません。
それゆえ、もし生身のまま宇宙空間に出ると、体内にある空気がバランスを取ろうとして膨張し始めます。
空気が膨張しても皮膚がある程度耐えてくれるため、よく言われるように一瞬でパンッと破裂することはありません。
ただ大気がほぼない宇宙空間では呼吸すらできず、生身のままではすぐにお陀仏です。
詳しくはこちらをご参照ください。
生身で宇宙空間に出たとき、人体はどれだけ耐えられるのか?
そこで宇宙飛行士たちは船外活動(EVA)をする際に、体に圧力をかける宇宙服を装着します。
宇宙服の全体像は誰もが目にしているはずですが、グローブ(手袋)がどんな仕組みになっているかはほとんど知られていません。

実は宇宙服のグローブはかなり複雑な構造をしており、一般に次の4層から構成されています。
・肌に直接触れる1層目
・グローブ内に圧力をかけると膨らんで硬くなる2層目
・その硬い層に対し手指の動きを可能にする3層目
・宇宙空間の放射線や低温、飛来物から手を保護する4層目
です。
これで初めて宇宙飛行士は船外で安全に作業をすることができます。
ところが、宇宙飛行士が船外活動中に最も直面しやすい問題が「手のケガ」なのです。