川崎Fに染み付いた「タイトルを獲るときの空気感」

試合後に行われた記者会見(質疑応答)で、鬼木監督は柏に主導権を握られた時間帯について反省。そのうえで、苦境を乗り越えた選手たちを称えている。

ー柏のペースで長い時間試合が進みました。自分たちのサッカーができなかった原因は何でしょう。

「選手同士の距離感が遠くなっていたと思います。2センターバックのところで(ボールを保持できる)時間はありましたけど、アンカー(中盤の底)や右サイドで、(ボールを)なかなかピックアップできない状況が続いてしまいました」

「ポジションがすべて中途半端でしたね。(中盤の選手が最終ラインへ)降りるなら降りきるとか。(最終ラインを)3枚にしてパスを回すよう、途中から指示を出しましたけれど、(強力な)カウンターがあるチームが相手でしたので、中央にパスを付けるのを怖がってしまったのかなと。どこで起点を作るのかをはっきりとさせてあげられなかったのは、自分の力(不足)だと思っています」

ー選手に鬼木監督の話を訊くと、「あんな負けず嫌いな人はいない」という答えが皆さんから返ってきます。(昨2022シーズンなど川崎Fが)無冠だった期間は、負けず嫌いの鬼木監督にとって苦しいものだったと思います。タイトルへの思いを何度も口にされていて、今回(の天皇杯決勝で)獲りました。今のお気持ちを教えてください。

「タイトルはどんな形でも獲り続けないと、獲れないことに慣れてしまいます。タイトルを獲るときの空気感という、どうしても言葉では説明できないものを選手に味わってほしい。次の世代にも伝えてほしいと思っています。それはすごく必要なことですね。(こうした意味で)タイトルを獲れたのは喜ばしいことだと思います」

「ただ、この大観衆のなかで自分たちのサッカーで勝利できたかというと、そうではありません。非常に悔しさが残っていますし、もっともっとやっていかなきゃいけない。チームの底上げのところ(必要性)を感じています」

「ただ、どんな状況でも、苦しいなかでも勝てるというのは簡単なことではありません。これは本当に説明が難しいですけど、全員が本当に細かいところにこだわって、全員が勝ちにこだわらないと優勝はないと思っているので、そこは選手の成長を感じています」

鬼木体制がスタートした2017シーズン以降、川崎FはJ1リーグを4回制覇。これに加えルヴァンカップ優勝1回、2度の天皇杯制覇を成し遂げている。かつて鹿島の選手だった鬼木監督が、川崎Fに勝者のメンタリティーや逆境を乗り越えるための忍耐力をも植え付けた。