DIYから産業へ、産業からDIYへ

Raspberry Piや3Dプリンタは、DIY用途で使われていた製品が産業へ広がった例だが、メイカーフェア深圳では逆に産業分野からDIYへの進出した企業も見られる。

東莞市に本社を構えるWorldSemi社は、プログラムで光り方をコントロールできるLEDを開発している。WS2812シリーズなどのLEDは、ゲーミングPCやLEDディスプレイ、さらには街頭広告など、あらゆるところで活用され、年間の出荷数は数億に及ぶ。

CEOのイン氏は日々新しい製品の研究開発に余念がないメイカーで、メイカーフェアでもさまざまな出展作品を眺め、LEDをどう使っているか、どう使いたいかについてコミュニケーションしていた。

WorldSemiのブース。こうした産業用部材の企業もメイカーフェアに出展しているのは、ほかの場所に見られない、深圳の特徴だ。

人気のマイコンボードM5Stackブースに見る、日本との強い関係性

筆者は日本のDIY愛好家・ハードウェア設計者向けにセンサーやマイコンボードなどのツールを販売することを仕事にしているが、年々深圳からのハードウェアは増えてきている。

中でも2018年に日本での販売を開始したM5Stackシリーズのマイコンボードは急速にシェアを拡大している。西和彦氏率いるIoTメディアラボラトリーが開発するMSX0シリーズのハードウェアとして採用されるなど、多くの日本人メイカーに支持されている。

M5StackはIoT開発用のツールキットで、ESP32シリーズのSoCを採用し、5cm角の筐体にLCD画面、バッテリ、Wifi/BT、多くの拡張ポートなどを備えている。一通りの環境が揃っていることですぐプロトタイプが始められること、最初から画面による確認ができることなどから初心者・熟練者を問わずユーザーが多い。

こちらはイベントでの展示用に作成した50cm角の巨大M5Stackデモ。このように重ねる(Stack)ことで機能や拡張ポートを増やしていくことができる。

そのM5Stackブースでは、現行製品・開発中の新製品のほかに、日本のM5StackファンたちがM5Stackを利用して作成したオープンソースのコミュニケーションロボット「スタックチャン」を展示。

スタックチャンはM5Stackを顔に見立てたコミュニケーションロボットで、オープンソースでデータファイルやプログラムが公開されていることから、多くのユーザーが思い思いのスタックチャンを自作している。

上の写真では、耳をつけたもの、毛でくるんだもの、足がクローラーになっているものなど、色も形もさまざまなロボットが持ち込まれている。

これらのロボットはそれぞれ別々のユーザーが開発して、今回メイカーフェア深圳のM5Stackブースに、スタックチャンプロジェクトの発起人ししかわさんが持ち込んだものだ。

M5Stackは企業出展でスポンサーとしてメイカーフェア深圳に参加しているが、その中に日本のDIY愛好家活用事例が大きく紹介されることは、深圳のスタートアップと日本のハードウェア開発者が深く結びついていることを感じさせる。

主催者発表での地域別出展者は、

  1. 日本-7
  2. 香港-4
  3. 韓国-2
  4. アメリカ,スペイン,ネパール,ロシア-それぞれ1
    (全体の出展は123で、80%以上は中国国内)

と、国際組では日本からが一番多い。これはブース単位でのカウントなので、前述のスタックチャンは入っていない(深圳M5Stackとしてカウント)など、実際はさらに日本からの出展組が目立つメイカーフェアとなっていた。