ちなみに、ウクライナのアンドリーイ・メルニック外務次官(前駐独大使)はツイッターで、「F16、F35、ユーロファイター、ドイツ・イギリス・イタリアのトルネード、フランスのラファレス、スウェ―デンのグリペンなどの戦闘機が勝利のためには不可欠だ」と、具体的に機種を挙げて要求している。
ウクライナが戦闘機を要求してきたと伝わると、ショルツ政権はいち早く、「それはできない」と拒否している。戦車支援では積極的だった「緑の党」や自由民主党(FDP)も戦闘機の支援要求には消極的な反応が多い。ピストリウス独国防相は27日、南ドイツ新聞で「戦闘機の引き渡しは問題外だ。戦闘機は主力戦車よりもはるかに複雑なシステムであり、航続距離と火力がまったく異なる」と述べている。「ウクライナの飛行禁止区域」というレッドラインの死守だ。
一方、米国では長距離ミサイル、戦闘機の支援問題はもはやタブーではない、といった反応が見られる。バイデン大統領の国家安全保障副補佐官のジョン・ファイナー氏は26日、米TVチャンネルMSNBCとのインタビューの中でウクライナへの戦闘機供与について、「慎重に議論する。特定の兵器システムを除外しない」と述べている。英国やフランスも、「戦闘機の配備が欧州の安全保障を危険にさらさず、ロシアの侵略戦争をエスカレートさせないならば」といった条件付きで検討に入っている。
ウクライナ戦争は来月24日で1年目を迎える。ウクライナを軍事支援してきた欧米諸国は最初は防衛用重火器を支援し、それから攻撃用武器の供与へと移ってきた。そして今、長距離ミサイル、戦闘機の支援がテーマに浮上してきているわけだ。軍事支援がこのまま続くと、行き着く先は地上軍の派遣となる。戦闘のエスカレートをストップさせなければ、ウクライナ戦争はロシアとNATO間の第3次世界大戦となる危険性が現実味を帯びてくる。「ウクライナ戦争で欧米諸国はどこにレッドラインを置くか」――深刻な問題となってきている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年1月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?