農家と連携し、新たな産品で商品開発
―――生産者との連携は、品質が高いゆえに量産ができなかったり、販路が確立できていなかったりする小規模農家の方にとっても心強い取り組みなのではないでしょうか。
今の時代、SNSでさまざまなことが調べられますので、生産者のSNSを拝見して、我々から相談させていただくこともあります。サンプルをお送りいただき、おいしいということが分かれば、数量限定などのかたちでタルトやケーキで商品化します。
生産者が丹精を込めた新しい産品が広まっていくことに協力できることは光栄ですし、何よりお客さまにも喜んでもらえるので、良い形で取り組めているように感じています。
―――タルト作りで生産者と連携した中で印象深いエピソードを教えてください。
2021年の取り組みですが、三重県伊賀市の生産農家の方の「伊賀満点星(どうだん)いちご」というイチゴを使った「三重県伊賀市産 “伊賀満天星いちご”のタルト」というタルトをつくりました。
山間の自然豊かな地で育ち、甘みや酸味、香りなどを兼ね揃えた濃厚な味わいのイチゴです。見た目の発色も濃く、タルトにした時のビジュアルでは光るものがありました。ご縁があって、希少なものだったのですが、使用させていただきました。
発売後の反響も大きかったです。生産者の方からは「周りから多くの声をかけていただくことになりました」と喜んでいただけました。タルトを購入いただいたお客さまにも喜んでもらえて、本当に嬉しく感じました。
三重県伊賀市産 “満天星いちご”のタルト
「仕事を通じどうなりたいか」
―――生産者との積極的な取り組みやコラボレーションが、農業や地方の活性化の一助にもつながっているように思います。
そうですね。その点は我々も意識しています。地域の魅力ある産品を使うことで、お客さまに我が町の食材が「こんなタルトになるんだ」と喜んでもらえますし、生産者の方も口コミで取り組みを広めてくださる。
そうやってファンが増えていくことで、キル フェ ボンのタルトやケーキも広がっていきます。農業や全国の地域も盛り上げたいという思いは常に持っていて、そうした役割を今後も果たしていきたいと考えています。
―――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
仕事を通じてどうなりたいのかということを持つことが大事だと思います。私は自分が一番好きだったお菓子作りを職業にしようとアルバイトからスタートしました。
そして、自分でやると決めた時には行動も必要です。私にとっては、東京初進出となった青山店の店長に立候補したことが転機となりました。
自分がやると決めたことを小さなことでもいいのでもやり遂げていくことも必要です。会社員として組織の一員である中では、それらを1つひとつ乗り越えていった先に見えてくるキャリアがあると思います。私のタルトやケーキ作りも、これからも続いていきます。