アート作品のようなタルトやケーキを世の中に発信し続けている「キル フェ ボン」で、商品の企画・開発で中心的な役割を果たす営業企画管理本部副本部長の柿畑江里さん。
後編では、組織の中でクリエイティブを発揮し続けるために個人で取り組んでいることや、クリエイティブとのバランスをとりながらビジネスとして顧客の支持を集めていくためのポイントをインタビュー。
また、タルトやケーキで使用する希少な農産品の活用を通じた農業や地方の活性化への思いについても聞きました。
前編の「『キル フェ ボン』がアートのようなタルトやケーキを生み出し続けられる訳 商品の企画・開発のリーダーに聞いた舞台裏とキャリアの歩み方【前編】」はこちら
日常からさまざまな価値に触れる
―――商品の企画・開発をリードする立場から、クリエイティブな視点を維持するために普段、どのようなことに取り組んでいらっしゃいますか。
日常からジャンルを問わず、さまざまな価値に触れるように心がけています。例えば、絵画を鑑賞しに行ったり、アンティークの宝石やクラシックカーなど、古き良きものを見に行ったり。そのほか建築や料理なども。世の中にある素敵なものにどんどん出会っていこうと意識しています。
そして、例えば、そのクラシックカーで車体のここのラインがきれいだなと思ったら、タルトに落とし込むとどうなるんだろうということを四六時中、考えていますね。
アイデアが浮かんだら、忘れないうちに書き留めたりもしています。
―――日常のインプットの連続がタルトやケーキづくりに生かされているのですね。
自然の風景から着想を得ることも多いです。休暇で海に訪れた際、海水が跳ねた時の白波のイメージをタルトに生かせないかと考え、生クリームで表現したこともあります。
クリームを塗る時に使うパレットナイフを動かして試行錯誤するうち、波のように見えるカタチができたことがありますが、リアルにかつ、おいしそうに仕上げるのは簡単ではありませんね。
クリエイティブとビジネスの間で
―――ビジネスにおいては、収益性やコスト、オペレーションの効率なども重視されると思いますが、クリエイティブとビジネスとの両立はどのように考えていますか。
キル フェ ボンは、マーケティング的に「この価格で売りたいからこうしよう」ということよりも、お客さまが「このタルトをぜひ買いたい」と思ってもらえるかどうかを最も大事にしています。
「いいものは売れる」という信念の中で、出来上がったものに価格がつくということが比較的多いです。
ただ、コストは無視できません。いいものだからと言って、価格がいくらでもいいということでもなく、お客さまが買いやすい値段も考えなければなりません。
また、多くの方に届ける上で製造効率も考える必要があります。
そうすると、タルトのこの部分はこういう構造の方がいいよねとか、こんな風に仕上げた方がいいよねという工夫に最大限、知恵を絞ります。そうしたことも、クリエイティブの一環と捉えています。
―――キル フェ ボンは世の中でまだ知られていないフルーツや食材なども積極的に採用していくことでも知られていますが、どのような狙いがあるのでしょうか。
1つは、感動や驚きをお届けしたいという思いがあります。どこでも手に入るものではないものを提案することで、「ぜひ味わってみたい」とお客さまにワクワクするような気持ちになってもらいたいという考えです。
そのため、公式サイトなどを活用し、生産者の皆さまに向けて契約栽培や直接取引きの募集を行っています。新鮮な素材をあらかじめ確保する上でも重要となっています。