リーグでもクラブ史上最高順位を達成

今季の福岡はリーグ戦でも7位に入り、2021シーズンの8位を超えるクラブ史上最高順位を達成。ただし、得失点を見ると14位で終えた2022シーズンから大きな変化はない。マイナス9からマイナス6へと、わずかに3改善したのみ。それでいて勝ち点は38から51へと13も上積みできたのは、勝負強さを身につけたからではないだろうか。

15勝のうち13勝が1点差での勝利。また逆転勝利は6つと、自信を胸に紙一重の試合をものにしてきた福岡。真の自信は目に見えるものではなく、一朝一夕で身につけられるものでもない。多くのチームが求め欲しがるものを手にしたシーズンであり、より上位を目指すであろう来季以降の強みとなるはずだ。

アビスパ福岡 長谷部茂利監督 写真:Getty Images

福岡が来季に残した課題

収穫の多かった今シーズンだが、克服しなければならない課題も明確になった。リーグ戦での福岡は、優勝したヴィッセル神戸、2位横浜F・マリノス、3位サンフレッチェ広島、8位川崎フロンターレ、10位アルビレックス新潟にそれぞれ2戦2敗と“シーズンダブル”を喫している。シーズン全13敗のうち、5クラブに10敗は偏った数字だ。

川崎のFWマルシーニョや横浜FMのFWエウベル、神戸のFW武藤嘉紀など、サイドに強烈な個を擁する相手に苦戦しており、中央を寸断しサイドに追い込む守備を志向する福岡にとって悩みの種となっている。とはいえ、課題を地道に1つずつ解決するのは長谷部監督の得意分野。2021シーズンはカウンター以外に攻め手がなかったチームが今季は繋いで崩せるようになり、以前は相性の悪かった浦和や名古屋などとも十分渡り合えるようになった。上に行けば行くほど新たに見えてくる課題にも、これまで同様地道に取り組みチームを更なる高みへと引き上げてくれるはずだ。


アビスパ福岡 MF井手口陽介 写真:Getty Images

必要なのは主力の慰留とコンセプトに合致した補強

見事な結果を出しシーズンを終えた福岡。ここからは来季に向けクラブと強化部の仕事が重要となる。資金力が限られたチームが結果を出した時、自ずと向き合わなければならないのが選手の引き抜きだ。漏れ聞こえてくる報道にもあるように、福岡も無縁ではない。主力選手の慰留を成功させることだけでなく、ピンポイント補強での上積みが求められる。

慰留や補強における、福岡の強みはおもに2点。多くの選手を成長させてきた長谷部監督の続投が早々に決まっていること。そのため、努力を重ねれば出場機会を得られる土壌が確実にあることだ。柳田伸明強化部長は「既存の選手をベースに」と表明しており、長谷部監督就任から一貫して継続路線を貫いている。予算も限られることから補強はこれまで同様「名より実」になるだろう。今季でいえば、FC東京で出場機会の限られていたMF紺野和也が福岡では9月度の月間MVPを受賞するまでになり、セルティックで出番を得られなかったMF井手口陽介は福岡で絶対的な主力となった。

夢を現実化したシーズンが終了。移籍が活発なサッカー界において、来季も全く同じ選手たちでシーズンに入ることはあり得ないだろう。来季どころかオフシーズンから厳しい現実を突きつけられることもある。それでも、強さの大きな要因である長谷部監督体制は来季以降も続く。別れを経て、新たな出会いを重ね、より強く、より地域に愛されるクラブへと成長してほしい。福岡サポーターに未来永劫語り継がれるであろう2023シーズンは、そのきっかけとしても最高のシーズンだった。