アビスパ福岡のサポーターにとって夢のような時間だった2023シーズンが終了した。厳密には12月18日に控えているウクライナとのチャリティーマッチ(シャフタール・ドネツク戦)は残っているものの、公式戦はすべて終えた。
ここでは、今シーズン開幕前に長谷部茂利監督が掲げた目標を達成し、それ以上の成果を残した福岡のクラブ史上最高となった1年を振り返る。
今季最大のトピックとなった「タイトル獲得」
12月3日に開催された2023明治安田生命J1リーグ最終節。アビスパ福岡はホームであるベスト電器スタジアムにサンフレッチェ広島を迎え、惜しくも0-1と敗退してシーズンを終えた。試合終了後に行われた最終戦セレモニーで来季の新ユニフォームを発表した福岡。遠目からは大きな変化がないものの左胸には小さな星が輝き、タイトルと無縁だったクラブが、ついにタイトルホルダーとなった証が刻み込まれていた。
今年、福岡がYBCルヴァンカップ(ルヴァン杯)を獲得できたのは決して偶然ではない。約3年前の2021シーズン開幕前、長谷部監督は「(リーグ戦の)順位は10位以上、ルヴァン杯はベスト4以上」との目標を語り、この時点で種を撒いていた。その年のルヴァン杯はグループステージ敗退となったものの、リーグ戦での出場数が少ない選手を積極的に起用。経験を積みながら高い位置を目指した。
「カップ戦ベスト4」という目標は、2022シーズンも今2023シーズンも変わらずに掲げられ、昨シーズンは僅差のゲームをものにしてグループステージを2位で突破。準々決勝では新型コロナウイルスによる選手の離脱が多数あり、GK山ノ井拓己をフィールドプレーヤーとして起用するなど本当の意味での総力戦を体現し、ルヴァン杯ベスト4を達成した。
そして今シーズン。クラブとしてもチームとしても重ねた経験をルヴァン杯で遺憾なく発揮。グループステージを1位で通過すると、過密日程で迎えた名古屋グランパスとの準決勝第1戦では、前試合から大幅に選手を入れ替え勝利。長谷部監督のマネジメントで選手層を厚くした福岡は、決勝で浦和レッズを撃破しタイトルを勝ち取った。この決勝でスタメン出場し、その後のリーグ戦でも出場を続けたGK永石拓海は、加入初年度(2022)リーグ戦の出場は8試合のみ。カップ戦で多くの試合経験を積み大幅に成長を遂げた1人だ。