日銀の出口判断に重要な賃金

 これに対し、日銀はインフレ目標2%を掲げている。しかし、輸入食料品価格の上昇により消費者物価の前年比が+2%に到達しても、それは安定した上昇とはいえず、『良い物価上昇』の好循環は描けない。つまり、本当の意味でのデフレ脱却には、消費段階での物価上昇だけでなく、国内で生み出された付加価値価格の上昇や国内需要不足の解消、単位あたりの労働コストの上昇が必要となる。

 そしてそうなるには、賃金の上昇により国内需要が強まる『良い物価上昇』がもたらされることが不可欠といえよう。となると、「2%の物価目標」達成をどう判断するかが重要となってくるが、ここではやはり賃金の動向が重要になってこよう。というのも、植田新体制になって日銀はフォワードガイダンスに賃金を盛り込んでいるからである。そして具体的に日銀は2%の物価目標を念頭に置いた場合、名目賃金上昇率+3%、つまり実質賃金が+1%上昇する姿が理想的であると説明している。

 このため、現時点で実質賃金が18カ月連続でマイナスであることからすれば、いくらインフレ率が2%を超えているとはいえ、日銀が理想とする「2%物価目標」とは程遠いといえよう。となれば、少なくとも来年の春闘の結果が賃金に反映されるまでは金融緩和の出口には向かえないということになろう。

(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

「悪い物価上昇」進行の実態…実質賃金低下と物価上昇でエンゲル係数上昇
(画像=『Business Journal』より 引用)

提供元・Business Journal

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